土地売れば3億円…時給2000円 熊本・菊陽町「半導体バブル」 一方で“嘆き”の声も【羽鳥慎一モーニングショー】(2024年2月23日)

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 24日、熊本県菊陽町で世界的な半導体メーカー「TSMC」の工場が開所式を向かえる。町は土地の高騰など“半導体バブル”と呼ばれる空前の好景気に湧いている。一方で、人手不足で時給が2000円に高騰するなど、熾烈(しれつ)な人材獲得競争も起きている。

■通勤ラッシュ「東京と変わらない」

 電車を降り、続々と仕事に向かう人たち。バス停にも、多くの行列ができている。

 都心の通勤ラッシュのような光景だが、ここは熊本県にある小さな町・菊陽町の無人駅。東京から転職してきたという女性は、次のように話す。

東京から熊本に転職
「熊本に来たら(通勤が)楽になると思ったんですけど。東京と変わらないですね、正直」

 混雑しているのは、この無人駅だけではない。工場への道路も朝から大渋滞となり、車はほとんど進めない状況だ。

 これほど多くの人が集まる理由。それは、24日に開所式を迎える半導体工場だ。台湾の世界的半導体メーカー「TSMC」が進出したことで、菊陽町では“半導体バブル”が起こっている。

 景気のバロメーターとも言われるタクシーは…。

タクシー運転手
「ここ1年半くらい、相当仕事量も増えました。同僚も毎月の売り上げが、軽く100万円超える人も何人かいて」

 コンビニや居酒屋に行く時など、ちょっとした移動にもタクシーを利用する客が増えているという。

■地価暴騰「売れば2億から3億になる」

 カラオケで盛り上がるスナック。飲みに来たお客さんに景気を聞いた。

建築関係社長
「ひっきりなしに仕事が入ってくる。けっこう(建築)関連じゃ、もうかってますね」
「(Q.いくらもうかってる)数千万円くらい」

 建築関係の仕事をしている男性は収入も上がり…。

建築関係社長
「(Q.最近一番大きな買い物は?)重機とか、そういうのを買った。プライベートでは乗用車とか。クラウンだったんですけどね。家とかほしいですよね」

 この店では町に半導体工場ができたことで、連日景気の良い客でにぎわっているという。

スナック夢叶 黒川美智子店主
「台湾の人たちってお金持ちの人が多いって聞きますから。売り上げはぐっとぐっと上がっていくかなと期待してます」

 工場の近くに土地を所有しているという男性は、次のように話す。

地主 田代国広さん
「地価暴騰しとるもん。(土地を)売れば2億~3億円になる」

 男性に、その土地を見せてもらった。元々、酪農で牛を飼っていたというこの土地は、広さなんと1800坪。

田代さん
「先日、銀行が融資の件で来て。担当者が(1坪)20万円だと言った。去年の今ごろは10万円だった。(半導体工場ができる)前は2~3万円だった。もう何倍にもなったね。1800坪か(売れば)3億くらいになるね」

 男性はこの土地に半導体工場で働く人向けのアパートを建設し、家賃収入を得ようと考えているという。

■不動産会社「予想の地価よりも上がっている」

 菊陽町は元々特産品のニンジンやコメ、花など農業が盛んで、町の周辺には畑が広がっていたが、現在では続々と新築マンションの建設が行われている。

 元々、畑が広がっていたこの土地も、今ではマンション工事が進んでいる。

コスギ不動産HD 小杉竜三取締役
「ここが今年の8月に完成予定の新築の賃貸マンションになります。TSMCの進出によって、私たちの会社だけでも数千万円の売り上げは上がったかな。間違いなくバブルに近い状況になっている。私たちが予想していた地価よりも、まだまだ上がっているので。どれだけ上がるんだろうと、常日頃思っていますね」

 そもそもなぜ、菊陽町に巨大半導体メーカーが進出することになったのか。

 その理由は、半導体製造で欠かせない「きれいな水」。熊本県は「質の高い地下水」が豊富で、半導体関連企業が200社以上進出している。

■銀行「バブルに近い形の価格の上がり方」

 こうしたなか、地元の銀行にも“半導体バブル”の波がきている。

熊本銀行の会議
「関東・関西を中心に県外企業に加え、海外企業、特に台湾関係の相談も増加」
「(土地を)売りに出したら、すぐに買い付けが入る状況」
「県外企業の土地取得は容易ではない」

 国内外の半導体関連企業など、およそ200社から新たに県内進出の相談が寄せられている。

 特に希望が多いのが「菊陽町での土地の確保」。しかし…。

熊本銀行 桐原健チームリーダー
「8割くらいが、進出がなかなかすぐには決まらない状況。一言で言うと、バブルに近い形の価格の上がり方」

■家賃上昇も…賃貸物件は“奪い合い”の状態

 土地の奪い合いが激化するなか、賃貸物件にも変化が起こっている。

 案内されたのは、去年9月に完成した若いファミリー向けのマンション。

明和不動産・広報課 城聡美さん
「間取りがファミリータイプの3LDK。設備は、こういったシステム対面キッチンとか、パントリーなどがある部屋になっています」

 広さ94.49平方メートルのこちらの物件。家賃は、ひと月13万4000円。TSMC進出前の相場は10万円にも満たなかったという。

城さん
「熊本市内の方が、以前の相場は高かったんですけど。(熊本市内)より高くなっているというのは感じています」

 家賃は上昇しているにもかかわらず、菊陽町の賃貸物件は奪い合いの状態だという。

城さん
「中が見られるようにまで待ってしまうと、すぐ埋まってしまうので。すぐに決めて頂くような状況になっています」

 2021年11月、TSMCが熊本進出を発表してから菊陽町では在住外国人の数が急増。この店は隣の大津町から移転し、先月28日に開店したばかり。

コメノパンヤ玄氣堂 西山今日子さん
「TSMCさんができるということで、思い切ってこちらにオープンしようと思ってきました」

 地元の玄米を使用したパンがズラリと並ぶこの店は、移転して売り上げが3倍になったという。

西山さん
「(移転は)バッチリ成功だったと思います」

 街に台湾から来たお客さんが増えることを見越して、こんな商品も開発中。台湾の定番料理、ルーロー飯の具材を挟んだバーガーや、甘辛い台湾唐揚げを挟んだバーガー。そして、マヨネーズに砂糖とバターを加えたサンドイッチ。

西山さん
「台湾特有のサンドイッチであったりだとか、イメージとして甘じょっぱい味付けが好きなのかな」

■“時給戦争”はさらに激化…時給3000円の可能性も

 町に訪れた空前の好景気。人件費も、飛躍的に跳ね上がっている。

 熊本県では最低賃金が時給898円に設定されているが、地元の求人会社を訪ねてみると…。

あつまるHD 島津繁寿執行役員
「(夜の時間帯の時給が)1800円ということで恐らくですね、清掃で例えば首都圏でもですね、1700円を超える求人は見たことがありません。2000円っていうのもありますし、これぐらいの金額を出すのもいとわない、そういう会社がいよいよ来たなと。黒船が日本に来たなって感じですね」

 TSMCの第一工場はいよいよ、24日に開所式が行われ、12月までに本格的な稼働が始まる。

 今月、第二工場の建設も決まり、工場だけで合計3400人以上の雇用が見込まれ“時給戦争”は、さらに激化するという。

島津執行役員
「第一工場の給食(食堂)スタッフで1500円ですから、第二、第三となりますと、3000円に近づく、3000円に到達する額が出てくるでしょうね」

 時給や地価の高騰などで街が盛り上がる一方で、“嘆き”の声も…。

■「地価高騰」のあおり…もろに受けた店も

 おととし8月に熊本市内から菊陽町に移転したラーメン店。去年10月に取材した時には…。

ラーメン天外天 小田圭太郎代表取締役(去年10月)
「売り上げが上がったことは万々歳。工場ができて昼間に滞在するお客さんもどんどん増えると思うので、期待しかないですね」

 そう語っていたが、今週19日に再び話を聞きに行った。

小田代表取締役
「工場とかができて、人材確保がなかなか難しくなってきています。ラーメン屋で時給1000円で募集をかけても、全然やっぱりヒットしない感じで。“時給戦争”には勝てないですし、かといってですね、(値段を)上げられるわけでもないので、どうしたらいいか分からないです」

 地域が抱える課題は人材不足だけではない。地価高騰のあおりをもろに受けた店もある。

 新鮮な野菜が格安で購入でき、20年にわたり地元で愛されてきた青果店。

 土地の高騰で家賃が値上がりしたため立ち退きを余儀なくされ、現在は熊本市内で銭湯の駐車場スペースを借り、販売を続けているという。

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年2月23日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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