一調「松虫」

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摂津国阿倍野の市の酒売り（ワキ）のもとに、いつも友人(ツレ)を連れて酒宴をしている若い男（前シテ）がいた。酒売りが素性を尋ねようとしていると、若い男は「松虫の音に友を偲ぶ」故事として、昔このあたりを仲の良い二人の男が通りかかり、そのうちの一人が松虫の音にひかれて、不審の死を遂げたと物語る。そして実は自分がその男の幽霊なのだと明かして消え失せる。夜、酒売りが、男のことを弔っていると、男の霊（後シテ）が現れ、友と心通わせた日々を懐かしみ、虫の音に興じて、旧懐の舞を舞う。夜が明けていくにつれ男の霊は消え、そこには虫の鳴き声だけが残っていた。

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