【秘封MV】五秒革命前夜-the World of Dystopia-【TUMENECO】

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TUMENECO初となる、秘封倶楽部フルMVがついに誕生__!

the World of Dystopia
  五秒革命前夜

2019年より誠意制作中のフルアルバム
「the World of Dystopia(ザ・ワールドオブディストピア)」
突然の事故により記憶を失ったハードディスク。
Lost the DATAしたTUMENECO。果たして光を見出すことはできるのか__
作品のメインテーマソング「五秒革命前夜」を、アルバム完成に先立って大公開!

収録アルバム
「the World of Dystopia」
ブックレット小説付き 秘封アレンジフルアルバム

特設HP:未作成
アルバムリリース予定日:未定(データの復旧、もしくは再制作にお時間をいただきます) 

委託通販:未定(おそらくメロンブックス様)
アムバム公開まで、気長に、楽しみにお待ちいただけますと幸いです。


◆MV クレジット◆ 
絵:たまはな(アメノハナビ)  / tamakohanabi  
歌詞:ななせ(lip tone)  / einanase  
歌:yukina(TUMENECO)   / yuzyuz_x    & みぃ(GET IN THE RING)  / miemum  
脚本:人比良(四面楚歌)  / allenemy  
動画:RF   / hal1929   & テルヤマール特等   / telyama_ru10910  
音楽:tomoya   / tumeneco    

◆原曲◆
原曲:少女秘封倶楽部、ラストオカルティズム~ 現し世の秘術師



〇五秒革命前夜 / 人比良(四面楚歌)


「午前四時五十三分十二秒。場所は京都新駅ビルの屋上」
「知ってる」
 ふあ、とメリーが口元で手を押さえてあくびをした。つられてあくびをしそうになって、どうにか我慢しようとして、我慢できずに間の抜けた声が漏れた。夜明けが近い時間になるとさすがに眠い。常人が目覚めてくる頃になると眠くなるのは、不良サークルならではだろう。
 そもそも閉鎖されているビルの屋上に入り込んでいる時点で、不良どころか非合法サークルだ。今に始まったことではないけれど。
 今日も今日とて、非合法なオカルトサークル活動。
 とはいえ――今日は、外れだった。
「出てこなかったわねー、噂のマント姿の怪人」
「場所が悪いんじゃないかしら。明日はもっと郊外まで出かけてみる?」
「もう二、三日はってみて、駄目なら場所を変えてみましょう」
 まだ無駄だと決めつけるには早すぎる。マント姿の怪人が現れる条件もろくにわかっていないのだ。あくまで京都に住まう学生たちの間で、そういう噂が出回っているというだけなのだから。
 ビルの影から影へと空を飛び、京都の街を暗躍する怪人。
 残念ながら、今日はエンカウントしなかった。予兆さえも感じさせない。ビルの屋上から見下ろす京都の夜は、どこまでもいつも通りの、穏やかで退屈な夜でしかなかった。
「怪人っていうんなら、出現予告くらいしてくれたらいいのに。怪人であって怪盗じゃないから駄目かな」
「それか『CMあけに怪人登場!あと六十秒後!』みたいな告知かしら」
「何その無駄なエンタメ意識」
 CMで告知される謎の怪人は、もはや謎でもなんでもないだろう。
 それに、六十秒後と予告されるのも、嬉しいような嬉しくないような。そんなものは完全に予定調和であって、謎でも秘密でもなんでもない。種のわかりきった手品のようなものだ。
 それを思えば、今日の空振りもまた、楽しみのエッセンスみたいなものだ。眠くはあるけれど、そんなに悪くもない。メリーだって、目が少しとろんと眠そうにしているけれど、顔は笑っているのだから。
 悪くない夜だった。
 私は肩をすくめて、冗談めかして言う。
「カウントできることなんて、せいぜい夜明けまでの時間くらいよ」
「本当に?」
「勿論! 私の能力なら確実よ。現在時刻はわかるし、夜明けの時間も把握している。あのビルの向こうから太陽が見えてくるまで、秒単位で読み上げられるわよ」
 む、と私は頬を膨らませて反論する。私だってプライドがある。自分の技能を軽んじられたままではいられない。相手が大切なパートナーだというのならなおさらだ。
 私たちはパートナーだ。二人組だ。対等の、共犯者だ。
 そうである以上、つり合いがとれていなければならない。だというのにメリーは、私をじっと見つめて繰り返すのだった。
「ねぇ、蓮子。それは本当のこと?」
「…………ぁ、」
 とろんと。
 夜に溶けるような目が、私を見つめている。
 そして私は、遅まきながら自身の勘違いに気づいた。
 メリーは私を軽んじてなんていなかった。
 彼女が軽んじているのは――世界の方だ。
 本当に、という言葉。
 本当に夜明けまでの秒数を数えられるのか、ではなく。
 本当に夜明けがやってくると思っているのか、とメリーの瞳は問いかけていたのだった。
 メリー。マエリベリー・ハーン。
 夢の境界を越える少女。彼女は――ある意味では、夜から夜にさまよい続ける人間だといってもいいのだから。
 私はじっと、蕩けるメリーの瞳を見つめ返す。彼女の瞳に私の姿が映り込んでいるのを確かめるように。
「……ま、明けない夜もあるかもしれないわね」
「醒めない夢だって、どこかにはあるかもしれないように。そういうことよね」
「あるいは逆に、五秒後に世界は終わるかもしれない。そういうものよね」
 それは子供じみた妄想だ。
 世界は五秒前に生まれたものだったり。
 世界は五秒後に終わるものだったり。
 たった五秒でも、世界は大きく変わる。
 子供の頃に信じていて、大人になったら忘れるような、夢。
 でも。
「ご、よん、さん――」
 私は気まぐれに、数を数え始める。五、から、一つずつ。ゆっくりと減らしてゆく。
 もしかしたら、と思ってしまうのだ。
 私は秘封倶楽部だから。少女で、秘封倶楽部だから。
 子供じみた夢を、捨てきれないでいる。
 五つの数を数えたのなら。
 これまでの世界が終わるかもしれない。
 これまでの世界が変わるかもしれない。
 だって。
「――に、いち――」
 数えながら、私はそっと、メリーを見る。不思議な瞳を持つ彼女は、さっきまでと変わらない、とろんとした目つきで私を見ている。私の急な奇行に驚くこともなく、数に耳を傾けている。
 メリー。メリー。マエリベリー・ハーン。

 かつて、私の世界は――彼女によって変わったのだから。

 桜舞う夜に、メリーと出会った。
 その瞬間に、全ては変わったのだ。
 それまでの退屈な日常は終わり、新しい日常が始まった。マエリベリー・ハーンがいる日常。秘封倶楽部のある世界に。毎日がわくわくの連続で、明日がやってくるのが待ち遠しい、そんな世界だ。
 カウントダウンなんてなかった。予兆も予感も働かなかった。突然に現れて、突然に出会って、貴女は私の人生を変えた。奇跡か魔法のように。
 だから。
「――ぜろ」
 世界よ革命されろ、と。
 願いを込めて、数を数え切った。
 そして――当然のようん、何も起きはしなかった。空がひび割れることもなければ、謎の怪人が現れることもない。穏やかで静かな、退屈な京都の夜に変化は何もない。
 ほら、こんなものだ。
 私は自分にそう言い聞かせるように、明るく肩をすくめて、
「メリー、帰りましょ。夜が明けるまでに帰らないと、警備員に見つかるから、」
「蓮子。次は、私の番よ」
「ゎ、」
 変な声が出た。
 さっきまで距離があったはずのメリーが、気づいたらすぐ目の前にいたからだ。悪戯を企む子供のような笑顔が、視界いっぱいに広がっている。いったい何よ、という暇もなく、その視界が塞がれる。
 メリーの手で覆い隠されたのだ。
「ちょっと、」
「いつ、よ、み――」
 何よ、と言わせてさえくれない。一方的に、好き勝手に、メリーは秒読みを開始する。私のそれとは違う、古い言葉での数え方。目を覆い隠されているので、声に意識が強く向く。楽しげな、笑っているような声。
 真っ暗な視界の中で。
 メリーの声だけが、世界の全てのようだった。
 ……まあ、いいか。
 メリーが何をしたいのかわからないけれど、好きにさせよう。悪い気はしない。メリーのこういうところも、私は好きなのだから。何より、こうして聞いている声は心地よくて、ずっと聞いていたくなるのだから。
 けれど無常にも、カウントは減ってゆく。
「――ふ、ひ――」
 ずっと、も。
 いつまでも、も。
 そこにはなくて。
 けれど、メリーは。
 終わりを告げる代わりに――耳を噛むように唇をあてて、世界の中で私だけに聞こえるような小声で、そっと囁くのだった。

「ひは、秘封倶楽部の、ひ、よ」

 するりと、目を覆っていた手が外された。
 世界は終わっていなかった。
 世界は変わっていなかった。
 けれど――私は、言葉を失っていた。何も言えない。目を逸らせない。
 メリーから、ではない。
 微笑むメリーの向こう。夜空の頂から、東の果てへと流れゆく星から、目を逸らすことができなかった。流星。流れ星。朝日を探すかのように、空の奥へと落ちていく星の輝きを、私は確かに見たのだった。
 涙のように星は落ちて、光は夜に溶けてすぐに消えてしまった。それでも、幻でも夢でもなかった。そのことを、私の前で微笑むメリーの顔が証明しているかのようだった。
 微笑みを見つめて、私は問う。
「……どうやったの?」
「泣いてくださいって、夜空にお願いしたのよ」
 ヒミツ、と。
 そう顔に描いてあるかのようだった。はぐらかすような微笑み。笑みの向こう側に、どんな秘密を抱えているのか悟らせない、それでいて秘密を抱えていることは否定しない――そんな、メリーの微笑みが、私は好きだった。
 その笑みを出されてしまっては、何をいえるはずもない。
 口を閉ざすことしかできない私に対し、メリーはますます笑みを深めて、
「次は雪でも降らせてみせましょうか?」
 世界の在り方を変えてみましょうか、と。
 なんでもないことのように、メリーは言う。私は無言で肩をすくめた。降参、の合図だ。
 種も仕掛けもない。
 そんなものは、ただの魔法で、ただの奇跡だ。
 もしそうでないのだとすれば、それは――ああ、それ以上は考えるのはやめよう。こんな夜には無粋だし、何よりもそろそろ夜明けだ。
 秘封倶楽部の活動は、今夜はおしまい。
「――その秘密、いつか暴いてやるんだから」
 不敵な笑みを浮かべて、私は歩き出す。それは強がりでもあったけれど、本心でもあった。私の楽しみ。変わってしまった、私の――私たちの、世界。
 秘封倶楽部の世界で、私たちは生きている。
 私たちは歩き出す。ふいに見上げた夜空は、じんわりと夜明けの気配を滲ませている。私は心の中でそっと、夜明けまでのカウントダウンをするのだった。
 隣を歩くメリーと、朝日を眺めるのを待ち望むかのように。


(了)

2020年10月
(Lost the DATAしたTUMENECOへ、人比良氏より応援短編小説「五秒革命前夜」を寄稿頂きました)



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©TUMENECO2020 本作品は東方Projectの二次創作作品です。東方Projectは上海アリス幻樂団様の創作物です。

#TUMENECO #東方Project #秘封倶楽部 #蓮メリ

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