硝子の声

静寂に閉じ込められた部屋の隅で　僕は君の言葉を探していた
硝子のコップに残った水滴が　まるで涙のように光を反射する
時計の針は止まったまま　それでも時間だけが進んでいく
君が最後に書いた手紙は　開かれずに引き出しの中で眠っている

何度も読み返したはずなのに　君の言葉は霧のように薄れていく
「大丈夫」と書かれたその一行が　僕をまだ縛り付ける
風がカーテンを揺らし　小さな光が壁に反射して踊った
まるで君の声がそこにあるみたいで　僕は息を詰まらせた

硝子のように脆く儚い　君の声が耳元で揺れている
それでも僕は何度も手を伸ばし　その欠片を拾い集める
君が残した言葉が　まだ僕を支えているから
静寂の向こうで　硝子の声が響いている

交差点で立ち止まるたびに　誰かの足音が遠くで揺れる
僕はまだ君を見つけられなくて　言葉だけが宙に浮かぶ
「またね」と小さく呟いたあの瞬間が　今も僕を縛り続ける
けれど、この手紙を君に届けるために　僕は進まなくちゃいけない

硝子の欠片が光を反射しながら　僕の足元に散らばっていく
一歩踏み出すたび、心が軋む音がした
未完成のままでもいいから　僕は答えを探し続ける
硝子の声が風に乗って　遠く遠く消えていく

街灯が少しずつ消えていく中で　僕は立ち尽くしていた
答えなんてきっと、どこにもないのかもしれない
それでも僕は言葉を綴り続ける
君が残した硝子の声が　まだ僕を包んでいるから