物証無しの全面対立 裁判の〝4つの立証テーマ〟とは 妻殺害の罪 元県議・丸山被告の初公判(abnステーション 2024.10.16)

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裁判を傍聴した吉田一平アナウンサーの解説です。


きょうの初公判、私も傍聴してきました。丸山被告は時折、検察官の話をメモしていて、子どもや殺害された妻・希美さんについて話が及ぶと、細かくうなずいていたのが印象的でした。

さて、今回の裁判は、検察側と弁護側、ともに凶器といった物証や目撃証言などいわゆる直接的な証拠がありません。
ゆえに、争点は「被害者を殺害した犯人は丸山被告か否か」と、全面的に対立しています。
そこで、今回の裁判では検察側・弁護側がそれぞれ立証するテーマが細かく4つに分類され、順番に争われていきます。

それぞれ、きょうの冒頭陳述に基づいて確認していきます。

まず、テーマ〔1〕は、「被告の事件当時の所在・移動状況」について。
検察側は「犯行時間帯に被告がいたと主張する議員会館と犯行現場である自宅を被告の車で往復した」と主張。
被告の車と車種やキズの特徴が似た車が複数の防犯カメラに映っていた、というのが証拠としています。
一方、弁護側は「犯行時間帯に被告が議員会館の外にいるのを誰も見ていない」「防犯カメラに映る不審車両は被告の車とは言い切れない」「被告は当時飲酒していて、事故や検挙のリスクが高く車で移動するとは考えにくい」などと主張しています。

つづいて、テーマ〔2〕は「被告の動機」についてです。
検察側は、「事件当時、被告が会社の経営のため希美(のぞみ)さんの親族から借金をしていて、その返済に困っていた」「事件当時、女性との不倫関係を巡って希美さんを邪魔に思った」などと、借金や不倫の事実に基づいて仮説を立てて主張。
これに対し、弁護側は、「希美さんは会社の経営や被告の県議としての活動、家庭の切り盛りなどに一生懸命だった。
そんな希美さんがいなくなって一番困るのは被告」と主張しています。

つづいて、テーマ〔3〕は「事件現場の状況」についてです。
検察側は、「物盗り犯を装った被告の犯行」と主張。
その根拠は3つ示されました。
一つ目は「物色の痕跡」。
「遺体近くの机に入っていた金庫から現金がなくなっていたが、物色の痕跡はそこだけで、犯人は金庫の場所を知っていたとと思われる」こと。
2つ目は「足跡」。
「金庫が入っていた机まで『一方通行」で、遺体に手が届く場所などには足跡は存在しないことから、「偽装工作」されたと思われる」さらに「靴底のデザインが被告が履いていたテニスシューズと一致した」こと。
3つ目は「遺留物」。
「遺体のそばには犯行に使用された形跡のないペンチがあったが、それは、敷地内の工場に保管されたもので被告とのつながりを示す」こと…一方、弁護側はこれらを「被告が犯人であると示すものとは言えない」とした上で、「敷地のブロック塀に何者かが侵入した痕跡がある」として「第三者による犯行の可能性」を指摘しました。

そして、最後のテーマ〔4〕は、「事件の直前・直後の被告」についてです。
当時、県議会議員だった被告は、事件発生の翌日に県議会一般質問を控えていました。
検察側は、「被告は事件直前『一般質問の原稿を作成する』と言って、同僚議員との懇親会を中座して議員会館の自室に戻ったものの、実際にはパソコンにUSBメモリを挿しただけで、7時間以上操作していなかった」として「アリバイ工作」を主張しました。
一方、弁護側は、「被告は原稿の構想を練ったものの、そのまま就寝しただけ」だと主張しました。

弁護側は冒頭陳述の最後、裁判官や裁判員に対し、「被告が犯人であると認定するためには検察官が、証拠によって合理的な疑いを差し込む余地がない程度に証明することが必要」だと、「推定無罪の原則」を訴えました。

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