Nana Kamiyama "Sugarless Honey/Bitter or Spicy?" 神山奈々「蜜〜にがきか/からきか」

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Nana Kamiyama "Sugarless Honey/Bitter or Spicy?"
for Noh voice and violincello (2018)
Ryoko Aoki (Noh) Seiko Takaemoto (cello)
6 September 2018, SHIBAURA HOUSE, Tokyo
神山奈々「蜜〜にがきか/からきか」
for Noh voice and violincello (2018)
青木涼子(能)竹本聖子(チェロ)
2018/9/6 SHIBAURA HOUSE
Talk & Concert "Noh × Contemporary Music" vol.6
http://ryokoaoki.net/concert/

大人になってから、懐かしさと少しの冷静さで、実家にある自分の本棚を眺めてみる。1番多いのは、図鑑や年鑑の類で、その次に多いのは、世界の伝承にまつわる本や、日本の歴史や文化について書かれた民俗学の本だ。それから隅の方にひっそりとあるのは、中学生の時によく読んだユングやフロイト、それからヘッセ。でも意外と純文学は少なくて、ごく限られた好きな作家のものだけを集めていたのがわかる。そして見るからに年季が入っているものは、母の仕事場にある本棚から欲しいとせがんで貰ってきたものだった。
 
私が母から貰った本は、大概が詩集だったことに気がついた。背表紙を見れば、特にお気に入りだった詩を、今でもすらすらと暗唱することができた。その中に、とても美しい装丁の与謝野晶子作品集があったのだが、なぜかどうにも一つの詩歌も思い出せずにいた。おそらく幼い私には、内容よりも表紙のデザインの方が魅力的だったのだ。
 
私の母は木彫を扱う仏師で、昼も夜も自分の机に向かっていた。子供心に、どうして夜中、煌々と手元を照らしながら作業を続け、時々ため息をついたりするのか不思議に思っていたし、その仕事が彼女にとって意味のあるものなのか、疑問を抱いていた頃もある。しかし今では、彼女の彫のなかにある、大らかさや勢いを「良さ」として感じることが出来るようになった。彼女は年を取り、使いすぎた眼が悪くなった。それでも明度が高い昼の時間を選んで、今日も机に向かうのだ。
 
いつしか私の机と本棚も、昔見ていた母のそれとそっくりになってしまった。締め切りも迫った夜中に、かつて表紙を楽しんだ作品集を開き、しっかりと読んだ。すると、若い母が、穏やかな神仏の顔を彫りながら、傍らで情熱的な晶子の作品を読む情景が浮かんできた。それは現代的でとてもしなやかな女性だった。そして100年前には、晶子がカッコよく美味しそうに喫んだタバコが、「吸う時は苦く、吐く時は辛かった」のではないかと、想像するのだった。

神山奈々

テキスト:

にがきか、からきか、煙草の味は。
煙草の味は云ひがたし、
甘しと云はば、かの粗忽者
砂糖の如く甘しとや思はん。
われは近頃煙草を喫み習へど、
喫むことを人に秘めぬ。
蔭口に男に似ると云はるるもよし。
唯おそる。
かの粗忽者こそいと多なれ。

1911年『青鞜』より 与謝野晶子「そぞろごと」から“煙草”




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