第二部各論 第1章13節 複雑性PTSDの診断・治療を解説。トラウマの扱い方について / Diagnosis and Treatment of Complex PTSD

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01:24 診断基準
05:03 鑑別
07:50 治療法
08:34 トラウマの評価?

今日は「複雑性PTSDの診断と治療」について解説します。

最近ニュースで「複雑性PTSD」という言葉を聞くことが増えたと思いますが、どのような病気かというのはあまり知られていないかと思います。

診断基準と鑑別(どのような病気が似ているのか、どのような病気として診断されていたのか)を解説し、治療法と私見を述べます。

今回、複雑性PTSDという診断がされたというのは、大きなことだったと思います。
「トラウマ」というものをどう評価するかが今後変わるのではないかと思いますし、「複雑性PTSD」と診断をされ直す人が増えるのではないかと思います。

■診断基準

複雑性PTSDが診断名としてICD-11(国際疾病分類 第11版)に入ったのはつい最近のことです。
今回は杉山先生の著書を見ながら解説します。

【参考】
杉山登志郎著「発達性トラウマ障害と複雑性PTSDの治療」(誠信書房2019)

・長期的、反復的な恐怖・出来事(虐待など)
これが原因で病気が生じたということです。

今までは主に虐待関係の出来事を「長期的、反復的な恐怖・出来事」として捉えていたのですが、他にも拷問、強制収容所、奴隷制、大虐殺、組織的な暴力を「長期的、反復的な恐怖・出来事」としました。

これまでは、トラウマの概念が狭かったのです。
もともとPTSDというものはベトナム戦争後にできた病名なので、かなり強烈な恐怖体験というものを診断の重要項目にしていました。その後、災害や虐待も含まれていきました。

複雑性PTSDにおける、トラウマのメインイメージは家庭内の虐待ですが、今回をきっかけにネットでの誹謗中傷や夫からの暴力、いじめもこちらに入ってくるのだろうと思いました。
今までは、トラウマというものの捉え方がある意味狭かったと言えるのかもしれません。

・PTSD症状
複雑性PTSDの疾患の中心はPTSD(心的外傷後ストレス障害)です。

侵入症状:フラッシュバック、生々しい映像、その時の記憶・感情を思い出してしまう。
回避:その時の恐怖体験を思い出すような場所、イベント、映像などを避ける。
覚醒・反応:雑音への驚愕反応、過剰な警戒、いつも身構えているような感じ。

複雑性PTSDはPTSDと違う点もあります。

気分変動性:気分のアップダウンがある。PTSDの場合は低めです。

自己肯定感低下:こちらはPTSDでも認めますが、抑うつ的な気分から自己肯定感が下がるのに対し、複雑性PTSDの場合は気分よりも生い立ちや経験が自己肯定感の低下をもたらすようなイメージです。

親密な関係を築きにくい

以上が複雑性PTSDの診断基準になります。
PTSD症状があり、長期的で反復的な恐怖・出来事があると「複雑性PTSD」ということになるかと思います。

■鑑別

・適応障害
パワハラなどのストレスによってうつになってしまうのが適応障害です。それに侵入症状などがあるのが、大きな違いです。

適応障害は、ストレスから離れて6ヶ月以内に症状が治まるというのが診断基準に入っています。
6ヶ月を超えてもなおうつが続く時には「持続性の適応障害」などと言います。

参考:ストレスで鬱になってしまった。「適応障害」って知っていますか?
   • ストレスで鬱になってしまった。「適応障害」って知っていますか?【精神科医が...  

・双極性障害
複雑性PTSDには気分の波があるということなので、双極性障害や双極性障害II型との鑑別が重要かと思います。

参考:双極性障害Ⅰ型Ⅱ型(躁うつ病)について解説します
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・境界性人格障害、発達障害
気分の波といえば、境界性人格障害や発達障害との鑑別も重要です。

ここがややこしいのですが、境界性人格障害や発達障害の人もフラッシュバック様の体験を訴えることが多いです。
これまでは、虐待経験のある境界性人格障害や発達障害と診断されていた人たちがいました。
なので、複雑性PTSDを合併した人格障害、発達障害と診断されるようになるのかもしれません。

・解離
いわゆる「ヒステリー」と呼ばれるものです。
PTSDと解離はどちらも心的外傷が疾病理解の重要なキーとなっていることもあり、診断は結構似ています。

細かい症状が違うので別の病名として挙げられていたのですが、今後はもう少しPTSDの診断範囲が広がって、解離という古典的なヒステリーの診断基準が狭まるのかと思いました。

解離というと、その人本人の脆弱性というイメージがついてしまいます。解離を起こしているのはこの人の問題なのではないか、というイメージを与えてしまいます。
PTSDと呼ぶことで、トラウマや悲惨さがより同情的になるのかという気はしました。

■治療法

・EMDR
眼球を動かしながら昔のことを思い出す治療法です。PTSDでも行われます。

・暴露療法
苦手な場所等がある場合、そこに少しずつ行って慣れていくというやり方です。

これらを交えた、カウンセリングが治療の中心になります。

・リスペリドン、アリピプラゾール
薬物療法としては、リスペリドン、アリピプラゾールなど、少量の抗精神病薬を使うことが多いと思います。

治療のメインは、薬物よりもカウンセリング的な要素になります。

■トラウマの評価?

今回は自分の臨床実感を交え述べました。「トラウマをどう評価するか」について、今回ネットの誹謗中傷も「恐怖・出来事」として考えよう、トラウマをもっと広く評価していこうという風潮になるのかもしれません。

どうしてこれまでトラウマとしてあまり評価されなかったかというと、1992年にジュディス・ハーマンがPTSDという概念を提唱した時から言われていたのですが、「トラウマを扱うときには中立はありえない」からです。

治療者がどれだけ患者さんに近づくのか、それに対してすごく同情的な立場になるのかどうかでトラウマに対する捉え方が変わり、中立であることはできない、と言っているのです。

(被害者同士も「お前程度の被害で同じトラウマ被害者だといって欲しくない」などの争いもあります)

今後は、同情的な立場になる人がもう少し増えるのかなという気はします。

解離や境界性人格障害、発達障害の場合は、個人の資質に原因を突き詰めていくことになりますが、複雑性PTSDの場合は環境に責任があると考えます。

暴力に対して個人の責任として「お前が我慢しろよ」というところから、より積極的に社会全体の問題として捉えていこうという方向に変わっていくかもしれません。

境界性人格障害というよりは「発達障害」、うつ病や新型うつ病というよりは「適応障害」と変わっていくように、個人の問題というよりは外側の問題、個人の性格の問題というよりは脳の特性やもともと持っている知的な能力の問題、というように切り替わってきています。

個人の主体性を評価せずに、社会全体の問題として捉えるようになってきている。

いわゆる古典的な精神医学は、時代背景もあり、もっと個人が重視されていましたが、フロイトが無意識を見つけたように、だんだん個人ではコントロールできないということがわかってきて、それがさらに広がっていき、ついにはトラウマの問題も身近になってきたのかなという印象を受けました。

あまり上手く言えている気がしませんが、私見たっぷりでお話ししました。

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『精神科医がこころの病気を解説するChとは?』
 一般の方向けに、わかりやすく、精神科診療に関するアレコレを幅広く解説しています。動画における、精神分析や哲学用語の使用法はあくまで益田独自のものであり、一般的(専門的)な定義とは異っているところもあります。僕がもっとも説明しやすいとたまたま感じる言葉を選んだだけなので、あまり学術的にとらないでいただけると嬉しいです。
                 早稲田メンタルクリニック院長 益田裕介

『自己紹介』
益田裕介
防衛医大卒。陸上自衛隊、防衛医大病院、薫風会山田病院などを経て、2018年都内で開業。専門は仕事のうつ、大人の発達障害。といいつつ、「なんでも診る」ちょっと変人よりの町医者です。
趣味は少年ジャンプとお笑い。キャンプやスキーに行きたいです。
2020年6月5日より断酒継続中。

【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/
カプラン 臨床精神医学テキスト第3版

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