救助できた人はゼロ 遺体の捜索しか…震災11年 消防隊長の思い【岡山・岡山市】

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東日本大震災では、当時、岡山県からも救助隊が派遣されました。

現地で活動にあたった男性消防士は、現在、隊長としてその経験を後輩たちに伝えています。

そこにある思いを取材しました。

(訓練の様子)
「分かりますか?いたら返事して下さい。隊長、反応あり」

ここは、被災現場を再現した岡山市内の訓練場です。

建物が倒壊した想定で、カメラ付の探索機を使いながら、ガレキに埋もれた要救助者を救出します。

指揮をとるのは、岡山市南消防署特別救助隊の松田智志隊長。指導する隊員の半数は、本当の被災地を知りません。

(訓練の様子)
「まだまだ画像探索機の扱いが全然できていない。しっかり誘導して。先々やっても良い事にならない」

東日本大震災発生の翌日、当時、松田さんが所属していた岡山県の消防救助隊は、津波で甚大な被害を受けた宮城県の多賀城市に入りました。

しかし、救助できた人はゼロ。

遺体の捜索を続けるしかできませんでした。

(岡山市南消防署特別救助隊 松田智志隊長)
「2歳か3歳くらいの子供が流れ着いているのを発見した時は、私も同じくらいの世代の子供が当時いたので、やっぱりすごく心に残っている。もっと遊びたかっただろうし、勉強も恋愛もしたかっただろうし、でも災害で命を落としてしまった」

当時、松田さんは、消防士になってまだ4年目。小さい頃からの夢が叶ったばかりでしたが、震災で、厳しい現実をつきつけられました。

(岡山市南消防署特別救助隊 松田智志隊長)
「知識も技術も足りていない中で、指示を受けて動くことしかできなかった。自分でしっかり考えて動けていなかった」

被災地で痛感した知識と経験不足。訓練では、重篤な要救助者を保護するため、微弱な音を検知できる高度な機材の使い方や、声かけのやり方について、徹底的に叩き込みます。

(指導の様子)
「Q.見えない所でいかに情報をとるか。例えば何を聞く?A. ケガの状況」
「なぜこの人が出てこられないのか。大事なのは家族構成を聞くこと。1人でも情報を取れるなら、何人中にいるのか、何人もいたら自分たちの隊だけでは活動できない。応援要請も必要になる。家族構成も聞くのを忘れてはいけない」

東日本大震災のような大きな災害が起きると、次々と新たな機材が導入されます。

それらを駆使して、命を守る最前線に立つ救助隊にとって、学びに終わりはありません。

(岡山市南消防署特別救助隊 松田智志隊長)
「大人になってからもずっと勉強だなと。慢心することなく、まだまだ自分には足りていないものがたくさんあるので、そこを追求するように日々精進している」

南海トラフ巨大地震は、30年以内に70%から80%の可能性で起きるといわれています。

次なる災害に備えて、松田さんは、若い世代とともに日々、訓練に励みます。

(岡山市南消防署特別救助隊 松田智志隊長)
「東日本大震災で小さなお子さんが亡くなられている時の映像は、頭の中でいつまでも残っている。岡山でそういったことが起きてほしくないと本当に心から思っているので、各家庭で災害に対する備えにつなげてもらいたいと本気で思っている」

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