アトピーの「かゆみ原因」+「改善法」がつきとめられる、佐賀大学が治療薬の開発へ

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国内の約125万人が悩む“アトピー性皮膚炎”。佐賀大学がかゆみの原因の1つを突き止めたことで、医療現場から新たな治療薬が期待されている。研究チームの出原賢治教授は、原因だけでなくかゆみを“著明に改善”できる阻害剤も発見したと発表しており「かゆみで苦しむ患者に福音となる」として新薬の開発を推進することにしている。佐賀大学の論文は今月、生命科学分野の査読付き国際学術誌「CellReports」オンライン版に掲載された。


◆かゆみの“正体”ついに突き止めた
アトピー患者「3歳のころからずっと苦しんでいます」「夜も眠れなかったり、皮膚が弱いから洗い物とか手洗いで荒れちゃうので」「肌を出すファッションができないですね、傷跡になっちゃうので」

激しいかゆみを引き起こすアトピー性皮膚炎。これまでその原因が分かっておらず、治療法も、かゆみを和らげる対症療法が中心だった。そんな中、佐賀大学は10日、かゆみの正体についての研究結果を発表。査読付きの学術誌にも掲載された。研究チームの代表は、炎症疾患を研究する出原賢治教授だ。

佐賀大学医学部・出原賢治教授「(原因は?)直接神経に作用してかゆみを引き起こす“ペリオスチン”というタンパク質が入っていて、それが原因の一つであることを明らかにしました」


◆湿疹部位に過剰なペリオスチン
強烈なかゆみを引き起こす原因だったタンパク質“ペリオスチン”はどのようなものなのだろうか?

出原教授「どなたでも一定量は体の中で作られることが知られています。ただ、アトピー性皮膚炎の患者さんは、湿疹の部位で非常に多量の過剰のペリオスチンが作られます。一方『インテグリン』という物質が神経細胞の上に存在し、ペリオスチンが来るのを待ち構えています。そこにペリオスチンがやってくるとインテグリンと結合し、そのままダイレクトに神経に刺激が伝わります」

ペリオスチンが体の中で増えてしまうと神経細胞の一部であるインテグリンと結合して知覚神経を刺激、かゆみを引き起こしていた。出原教授たちの研究チームは、この仕組みを妨げる化合物も見つけた。

出原教授「CP4715という化合物が、ペリオスチンとインテグリンの結合を阻害できるかもしれないと考えて解析しておりました。その結果、期待通りペリオスチンの働きを止めてくれることを見いだしました」

つまり、人工化合物CP4715によって、かゆみを防ぐことが初めてわかったのだ。研究に一役買ったのが実験用のマウス。生まれながらにかゆみを訴え続けているいわば“アトピー体質”のマウスにこの物質を投与すると、たちまちかゆみを訴えなくなったという。


◆湿疹の改善効果も確認「新薬」に期待
出原教授「ペリオスチンの作用を止めることは、かゆみを止めて湿疹も改善する効果もあることも明らかにしております。いってみれば一石二鳥が期待できます」

医療現場で日々患者に接している医師も新たな治療薬の開発に期待を寄せる。

高松ひろこ皮フ科(福岡市西区)高松紘子医師「アトピーは通常の塗り薬や飲み薬の治療になかなか反応しない重症の方が一定数いらっしゃいます。そういう方に選択肢が増えるのはいいことですね」

厚生労働省によると、アトピー性皮膚炎の患者数は2020年時点で約125万人。多くの人を「かゆみ」から解放できるかもしれない新たな発見に、今後の研究開発が注目される。

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