南の風の 作詞 北原白秋/作曲 草川信

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大正11年6月15日(1922年)
『「赤い鳥」童謡 第六集』

南の風の 作詞 北原白秋/作曲 草川信

  南の風の吹くころは、
  朱樂の花がにほひます。

  朱樂の花の咲く夜さは、
  空には白い天の川。

  三つ星、四つ星、七つ星、
  數へてゐたれば、つい、眠むて。

  ついつい、とろりとねんねした。
  そのまま朝までねんねした。

  南の風の吹くころは、
  朱樂の花がにほひます。


 大正11年に刊行された『「赤い鳥」童謡 第六集』に収録された歌。
 ザボン(ブンタン)は、マレー原産の果樹で、その実は柑橘類の中でも大きな花を咲かせる。
 白秋の詞には日本の自然、山河がたくさん登場するが、これは彼が小さい時にかなりの病弱であったことと関係が深い。彼は保養のために乳母「おいそ」と共に母親の実家に長逗留し、その間、肥後の四季に親しんだ。この時の体験が、後の白秋の創作活動に大きな影響を与えたことは言うまでもない。
 ザボンはそんな体験の中でも特別な存在として白秋の記憶に刻まれている。というのも彼は3歳のときにチフスにかかり、そのチフスが「おいそ」にも感染し彼女は死んでしまったのである。白秋は「朱欒(ザボン)の花の白くちるかげから通つてゆく葬列を見て初めて私は乳母の死を知つた」とし、「私の身代りに死んだのである」とも書いている(『思ひ出 抒情小曲集』)。
「南の風の」には、そのような小さな頃の悲しい思い出が込められているのかもしれない。

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