絵本 読み聞かせ 知育動画|辰子姫物語(たつこひめものがたり)/童話・日本昔話・紙芝居・絵本の読み聞かせ朗読動画シリーズ【おはなしランド】

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むかし、あるところに子どものいない夫婦がおりました。
夫婦は朝も夜も「子どもをお授けください」と毎日神様にお祈りしていました。"
"しばらくした辰の年の春、夢にまでみた女の子が生まれ、夫婦は辰子と名づけました。
大きくなるにつれ、辰子はとても美しい、雪のような白い肌と黒い瞳の娘となりました。その美しさは
「あの娘は女神が人間の姿になって生まれてきたのではないか」と村中で評判となるほどでした。"
しかし、辰子はそんな評判は気にすることもなく、いきいきと野山を駆けめぐり、毎日どろんこになりながら、友達と遊んでいました。
"何年か経った秋の日のことです。
木の実をつんで山を歩きまわった辰子は、泉のそばに座って水を飲み、ほっと一息つきました。
その時、泉に映った美しい自分の姿に大きく心が揺れました。
「いつまでも若く、美しくありたい」と思った辰子は、永遠の美しさを得るため観音様に願をかけることにしました。"
"それからというもの、雨の日も風の日も毎晩必ず
辰子は家族が寝てしまってから、観音様へと通いました。
こうして迎えた百日目の夜、いつものように観音様の前で
祈り続ける辰子の前に観音様が突然現れました。"
"「辰子よ、かわいそうな辰子よ、それほどまで永遠の美しさを願うならこの北の峰を越えるがよい。そこに湧く泉の水を飲めば願いが叶うであろう」
辰子は、この観音様のお告げを聞くと、急いで北の泉へと走りだしました。辺りが深いブナの森になったとき、光り輝く泉を見つけました。その泉には美しい魚が住んでいて、それを捕まえて食べた途端、とてつもなく喉が乾きました。泉の水を飲みましたが、飲めば飲むほど喉が渇きます。
こうして辰子は水面に口をつけて、ごく、ごくと飲み続けたのです。
するとどうでしょう。急に辺りは暗くなり、ものすごい勢いで雷が轟き、滝のような雨が降りだしたのです。
あっという間に山は崩れ、たっぷりと水を湛えた湖となりました。
こうして、日本一深い『田沢湖』が誕生しました。"
"そして、辰子の姿はいつの間にか、目は炎のように、歯は杭のように厚くて頑丈なうろこに覆われた龍の姿に変わっていました。
そこには、美しい村娘の姿はありません。"
辰子の母は、いつまでも帰らない娘を探し、辰子の名前を叫びながら歩き回りいつしか、今まで見たことのない湖の辺まできました。
「辰子ォー、辰子ォー、姿を見せておくれぇー。」と呼び叫ぶその声が湖の底に届いたのか、水しぶきを上げて巨大な龍となった辰子が姿を現しました。「お母さん、お許しください。私は永遠の美しさを観音様に願って、龍となりこの湖に住むことになりました。お母さんには、親孝行することもありませんでしたが、もうお別れです。
親不孝のつぐないに、この湖を魚でいっぱいにし、その魚を贈ることを約束します。」こう言い残すと、湖深くその姿を消しました。"
"辰子の母は泣きながら、手にしていたタイマツを湖に投げ捨てました。
すると、そのタイマツの燃え残りの木が、みるまに魚に変わり、スイスイと泳ぎ去りました。これが幻の魚『国鱒』です。
こうして、辰子は静かな山の湖『田沢湖』の主となりました。

おしまい


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