【藤井八冠への挑戦】「強くなること」豊島将之九段が語った藤井聡太八冠への思い　

新年１月２日。
関西在住の豊島将之九段が、
弟子で岐阜在住の岩佐美帆子女流１級とともに
愛知県一宮市で行われた毎年恒例の将棋イベントに参加し、

豊島九段が三面指し・岩佐女流が二面指しで、
大人から子どもまでを相手に指導対局を行った。

イベントに参加した関係者や女流棋士を目指す研修会生など
およそ２０人は、豊島師弟の丁寧な指導や感想戦に耳を傾け、
少しでも強くなろうと新年から取り組んでいた。

内々の会ということもあり、リラックスした雰囲気で
時折笑顔を見せイベントを楽しんだ師弟に
イベント後、話を聞くことができた。

イベントの感想について豊島九段は、
「小さくてもすごい強い子もいたり、毎年やっていますけど
　熱気を感じて、新しい年が始まったと実感した」

岩佐女流は、
「今回は二面差しの指導対局で大人の方とたくさん
指したんですけど、年の初めのお仕事は一宮の指導対局なので
今年も始まったなという感じです」
【２０２３年を振り返って】

豊島九段の２０２３年は、
タイトルに挑戦することはかなわなかったが、
「王座戦挑戦者決定トーナメントの決勝」で
藤井聡太竜王名人と王座挑戦をかけ争った。

名人挑戦を決める「順位戦A級」で
現在（２０２４年１月４日時点）唯一の６戦全勝。
今最も名人挑戦に近い棋士だ。

さらに、
将棋番組の講座を担当したり、
「振り飛車」など色々な作戦や戦型を用いて、
重要対局で勝利を収める、挑戦の年となった。

Q２０２３年を振り返って、印象に残った１局は？
「１局は難しいですけど、振り飛車だったりこれまで指していなか
った作戦や戦型を指せたのは良かったのかなと思う。成績とか内容
は良かった時期もあったんですけど最後の方は崩れて粘れなかった
のでその辺は反省点かなと思っています」

今年度の成績は、２１勝１５敗。（２０２４年１月４日現在）

昨年７月時点では、勝率８割を超え好調だった。

豊島九段本人も
「成績や内容が良かった時期もあったが１１月１２月が、
内容も成績も良くなかった」と語っている。

【振り飛車】

将棋の序盤の戦法は大きくわけて二つ。
一つが「居飛車」。
飛車を最初の位置にすえて戦う戦法で、
将棋AI的には高く評価されていて
藤井八冠を含む多くの棋士は「居飛車党」

もう一つが「振り飛車」
　序盤で飛車を動かす戦法。
今回、王将戦への挑戦を決めた菅井竜也八段が
「振り飛車党」として知られています。

「最初に指したときは、菅井さんが指しているのを見て指したいと
いう感じだったんですけど、その後は、菅井さんが指しているカタ
チとは違うようなカタチも研究して取り入れたりしています」

今年度豊島九段は、公式戦で３局飛車を振っていて、

・２０２３年６月２日　王座戦挑戦者決定トーナメント
　　　　　本田奎六段戦　「三間飛車」で勝利
・２０２３年１０月２３日　王将リーグ
　　　　　羽生善治九段　「四間飛車」で勝利
・２０２３年１１月１７日　棋王戦　挑戦決定トーナメント
　　　　　　本田奎六段戦　「四間飛車」で敗北

「どれも新鮮なのでどの局も印象に残っています」

Q振り飛車の魅力は？
「相居飛車の将棋とは違うかなり違う将棋になって、自分の中では
すごい新鮮な気持ちでさせるところとか。中終盤が長くねじり合い
が続くのでそういうところが面白いなと思っています」

現代の棋士の多くが取り入れている将棋AI的には、
評価値の下がる「振り飛車」ですが・・・。

「評価値は下がるんですけど、人間同士だと難しいところもあるの
で将棋ソフトの考えも参考にしつつ、ただ人間同士の戦いというの
はまたちょっと違った部分もあるので自分の指してみたときの感触
であったりも大事にしていきたい」

Q振り飛車を指すのは対藤井八冠を意識してのこと？
「意識している部分もないわけではないけど、藤井さん以外の棋士
に勝っていかないと挑戦できないので、対局とかを見て考えたりす
ることもありますけど、基本的には目の前の相手のことを考えてい
ることが多いです」
「（振り飛車を指すのは）経験を得て幅広い指し方をできるように
という気持ちもありますしこれまでも結構同じようなカタチに見え
ても自分の中で新しい工夫を出さなくては勝つことも難しい」
「強くなるのはすごく難しいことなのでこうやればいいというのは
ないんですけど、色々試していく中でどこかでなにか気づいて強く
なるということだと思う」

現在（２０２４年１月４日時点）通算５９５勝。
あと５勝で、通算６００勝。今年度中の達成が見えている。
また、順位戦A級全勝中と、藤井聡太名人への挑戦に現在最も近い。

今年はどんな戦法や作戦を用いて、
八冠独占を崩すことはできるのでしょうか？

【弟子・岩佐美帆子女流１級】

初めてつくった師弟扇子。
夢と揮毫（きごう）しました。

「豊島先生が四段の時に夢と揮毫（きごう）した色紙を
　アマチュア時代頂いていて、これで書きたいなとずっと思ってい
たわけではないけどなにか文字を書いてくださいと言われたときに
浮かんだのが夢だったので、夢を書きました」

高校３年生の岩佐女流すでに受験を終え、
心理学を学ぶという。

「大学２年生から本格的に学ぶことになると思うけど、
将棋に少しでもつながる部分があればいいなと思っていて、
心理学を専修を希望したんですけど、
大学で学んだことをこれからの将棋においても
つなげられるようにしっかり勉強していきたい」

今年度の成績は、９勝１１敗。
女流1級昇級後の対局で、年度成績指し分け以上（8勝以上）での
女流初段への昇段のチャンスがある。

「初段に昇段することを目指したい。今負け越してしまっているの
で、今年度３月いっぱいで決まるのでそれに向けて頑張りたい」

師弟ともども活躍に注目したい。

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