日本キリスト教団六ツ川教会　ローズンゲン釈義黙想（2024/8/23）

2024年8月23日（金）

【旧約聖書】
私が「足がよろめく」と言ったとき、主よ、あなたの慈しみが私を支えてください。詩94:18（協）

【新約聖書】
私の恵みはあなたに十分である。力は弱さの中で完全に現れるのだ。IIコリ12:9（協）

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「ローズンゲン釈義黙想」は、日本キリスト教団六ツ川教会の会員向けのメッセージです。
日々、御言葉を聞くことができるように毎朝5時に更新します。
「公開」設定にしていますので、六ツ川教会の教会員でない方も、ご関心のある方はどうぞ自由にご活用ください。

釈義黙想の後に、呼吸と沈黙の時間があります。
ヨガのトレーニングから学んだ呼吸法のごく基本的な方法を取り入れています。
御言葉を聞き、呼吸と姿勢を整えて、良い一日の始まりとなりますように。
どうぞ今日も笑顔でお過ごしください。

使用しているテキストは『日々の聖句　Losungen2024』（ベテスダ奉仕女母の家出版部、2023年）です。全国のキリスト教書店でお求めいただくことができます。税込み1,400円です。

*ローズンゲンで指定された場所以外は、聖書協会共同訳聖書のテキストを用いています。

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　使徒パウロは、何らかの病気を患っていたようで、諸説ありますが、どうもてんかん持ちであったのではないかという見方は、特に有名です。「聖パウロ病」とは、てんかんの別名だそうですから、それだけよく知られていることだということです。パウロは自分自身の病気のことを「とげ」と表現しています。7節からこのように書かれています。「私の体に一つの棘が与えられました。それは、思い上がらないように、私を打つために、サタンから送られた使いです。その使いについて、離れ去らせてくださるように、私は三度主に願いました。」そして本日の御言葉に続きます。「ところが主は『私の恵みはあなたに十分である。力は弱さの中で完全に現れるのだ。』と言われました。だから、キリストの力が私に宿るように、むしろ大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう」と言うのです。パウロのとげが、仮にてんかんであったとすれば、間違いなく宣教活動の大きな妨げとなったはずです。しかし、その妨げに対処するために、他の使徒たちが配慮し、協力してくれたかもしれません。そう考えますと、そのとげもまた恵みであって、宣教活動に関係した恵みだと考えられるのです。

　神さまの力は弱さのなかで働きます。弱さが、神さまの恵みを働かせる場なのです。パウロは「弱さを誇ろう」と言いますが、この「誇る」とは、「頼みをかける」、「信頼を寄せる」という意味に通じます。自分の弱さに頼みをかける、それこそ、神さまの力を発揮させる場となるのです。

　随分前にお会いした方ですが、ある大企業で大変活躍されている方がいました。お話を伺うと、その方は中学1年生のとき、陸上競技部の練習に熱中しすぎて、1年生にしていきなり留年してしまったそうです。そして友だちはみんな2年生に進級しているのに、自分だけ1年生をもう一度することになる。そして初日、新1年生のなかで一人ポツンとすわることになります。周りはみんな新品の制服なのに、自分だけは1年間着て、すこしくたびれた制服。明らかに1人だけ様子が違います。周りの新1年生も「なんだこの人」という視線で見てきます。ものすごく居心地が悪かったと言います。そして順番に自己紹介が始まります。最悪な状況です。自分の番になって、そこで思い切って言います。「ぼくは去年入学したけれども、クラブ活動ばかりして留年してしまいました。みんな、ちゃんと勉強しないと、僕みたいになるぞ」とはっきり言います。そのときに、胸につかえていたことがスッとなくなったと言います。そして新一年生ともうまく関係を築くことができたのです。

　自分の弱さ、負い目、それは隠すのではなく、明らかにすることで力になります。なぜなら、神さまの力は弱さのなかで完全に現れるからです。旧約の詩人は歌います。「私が「足がよろめく」と言ったとき、主よ、あなたの慈しみが私を支えてください。」弱さは弱さとして、そのまま神さまに訴え、周囲の人に打ち明けて良いのです。そのとき、そこに神さまの力が働くのです。
に立ち帰ろうと真剣に思うとき、神さまは私たちを立ち帰らせてくださるのです。

日本キリスト教団六ツ川教会牧師　　桐藤　薫