パラレルワールドとしての地球(山極壽一 地球研所長)

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現在、私たちは科学技術によってVRやメタバースなどの異世界を体験することができます。でも、このようなパラレルワールドを希求する気持ちは最初の人類の時代から芽生えていたのです。ゴリラやチンパンジーは目の前の現実しか認識しません。しかし、今から700万年前に現れた最初の人類の祖先は、直立二足歩行を始めて自由になった手で食物を運ぶようになりました。安全な場所で共食する仲間はその食物がある場所を想像するようになったのです。やがて、新たな環境へ進出し、異なる環境(集団)を行き来するようになったのが最初のパラレルワールドの出現です。そして、他の動物に憑依して異世界を体験できるようになり、言葉が登場して想像上の世界は拡大しました。人類は地球上の至る所に足を伸ばすようになりましたが、地域と地域は分かれていて、熱帯の人々が雪や氷の世界を想像することはなかったでしょう。探検家や冒険家によって、新しい大陸や土地の知識が入手できるようになり、ヨーロッパ列強がアジアや南米、アフリカを支配するようになりました。考古学や天文学の発達によって、映画や小説に過去や未来が登場し、それをバーチャルに体験できるようになって、時間も空間も超えるパラレルワールドを手中にできるようになりました。それが環境にどういう影響を与えるのか、歴史を遡って考えてみたいと思います。

地球研オープンハウス2022
2022年10月22日(土)13:00 - 17:00
https://www.chikyu.ac.jp/rihn/events/...

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