父の遺志を継ぎ、皆生の海を守る　21歳のライフセーバーの想いとは…

夏場の海の安全を守る「ライフセーバー」として、米子市の海で活動する一人の大学生がいます。口田斗哉さん２１歳。なぜ彼はライフセーバーを志したのか？そこには、憧れの父から受け継いだ強い想いがありました。


夏真っ盛り。暑い日差しを受けながら、海岸で汗を流し、海水浴客の安全を守る男性の姿がありました。

「こんにちは～」

米子市出身の口田斗哉さん２１歳。関東の大学に通う大学３年生です。

皆生ライフセービングクラブ　口田斗哉さん
「覚えてる限りだと３…４歳ぐらいから、この海岸の方には来てますね。」「安全を守るっていう意味では、特にコミュニケーションをていうふうに考えてますね。人と人とが関わり合わないとそういう安全っていうのは多分を守れないと思うので…」

斗哉さんは、毎年夏休みを利用して地元・皆生温泉海遊ビーチでライフセーバーとして活動しています。

皆生ライフセービングクラブ　野嶋功　理事長
「うちのクラブって結構高齢化が進んでおりまして、いま２６シーズン目に入っているんですけれども、そういったクラブについていける、代表できるメンバーの一人として、クラブをけん引していって欲しいなと思ってます。」

若くして、皆生の海の安全を守る一員となった斗哉さん。彼はいったいなぜ、ライフセーバーを志すようになったのか？そこには、大切な人との約束がありました。

「ここになりますね。えっと、うちの父のお墓になります。」

手を合わせるその先に眠っているのは、最愛の父・保さん。去年９月、５６歳という若さでこの世を去りました。

２００３年、米子市で生まれた斗哉さん。小さい頃は、水泳に熱中。高校の時には２年連続で中国大会にも出場しました。

そんな斗哉さんが幼いころから憧れていたのが、皆生でライフセーバーとして活躍する父・保さんでした。

皆生ライフセービングクラブ　口田斗哉さん
「父は、表立って目立つような行動をする人じゃなかったんですけど、ちゃんと土台となる部分を作ってくれたこと、言葉だけじゃなくて行動で目の前で示してくれるっていうところがちょっと憧れでしたね」

皆生ライフセービングクラブに１９９９年の発足当初から所属していた保さんは、ドローンを活用した海岸の監視など、全国に先駆けた先進的な取り組みにも積極的でした。

皆生ライフセービングクラブ　野嶋功理事長
「特に週末を中心にドローンを使った監視業務ですね。日本でも先駆けてやってくれたっていうこともありまして、いろんな意味で先駆的なことに関わってくれたメンバーでもありました。」

「少しでも早く憧れの父と一緒にライフセーバーとして活躍したい」、そんな思いを胸に中学３年の頃からボランティアとして活動に参加。高校３年になると、念願だった「ベーシック・サーフライフセーバー」の資格を取得。地元皆生で父の背中を追いかける日々を過ごしました。

しかし、ある日のこと。

「僕自身は、現実味がない、呆然としたような、そういうイメージでしたね」

保さんを襲った病。すい臓がんでした。斗哉さんはもちろん、家族も突然のことに戸惑いを隠せませんでした。斗哉さんの双子の妹・歩未さん。当時の家族の様子について…

口田歩未さん
「私と斗哉は、もう何がなんだかわかってない状態だったので、本当にがんなのかって疑っているような感じで、お母さんはもうずっと前から体調がなんか優れないなっていうのは分かってたみたいだったので…／受け入れるしかなかったていう感じですね。」

普段通り元気に振る舞う保さん、しかし病は着実に身体を蝕んでいきました。そして訪れた、別れの時。

口田斗哉さん
「もう…このまま良くなっていくとばかり思っていましたね、僕は。ずーっとこれからも一緒に歩んでいくと思ってました。」

失意に沈む斗哉さんを奮い立たせたのは、闘病中の父から貰ったある言葉でした。

口田斗哉さん
「亡くなる直前ですかね、ただ『頼むぞ』と一言だけ貰いました、最後に。」

この父の言葉を胸に、斗哉さんは再び前を向き始めます。

口田歩未さん
「亡くなるときはすごい泣いてたんですけど、そっからはもう自分がお父さんの代わりに頑張らなきゃ、この家どうにか頑張ってつなげていかなきゃっていう思いがあったのか、すごい頑張ってるっていうのが伝わってました。」

将来本格的にライフセーバーの活動をしていくことを決意した斗哉さん。父の遺志を継ぐべく、ドローンの免許を取得。ライフセーバーとしての声のかけ方に活かすことができると考え、心理学や言語学を学べる今の大学を選択しました。

保さんが亡くなってからおよそ１年。

口田斗哉さん
「これまで甘えていた部分からちょっと卒業して、自分でちゃんと役割を全うしようかなという風に思って、それを伝えさせていただきました。」

父の墓前で決意を新たにした斗哉さん。その目は、しっかり前を見据えていました。

皆生ライフセービングクラブ　口田斗哉さん
「僕、まだまだクラブの中では若い世代っていうことで、人に言われるというわけじゃなくて自分で考えて行動を起こせるということが目標です。父の姿を見て育ってきているので、言葉も大切ですけど、行動で示せるようなライフセーバーになりたいと思ってます。」

父の遺志を継いだ一人の青年。熱い思いを胸に、きょうも皆生の海の安全を守り続けます。

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