方言使った「振り込め詐欺」地方で多発…地道な捜査で被害者に“共通点”が浮上(2023年3月25日)

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実は今、方言を使った「振り込め詐欺事件」が全国で多発。広島では…。

息子役の犯人:「会社の書類や小切手があるって言ったじゃろ。そんな大事なもんのうなったらって話したら、会社クビになるんよ」

追跡取材班が向かった熊本でも…。

娘役の犯人:「さっき友達と株買ったって言ったど。実は友達の会社のお金を勝手に使って買っとったったいね」

犯人の女は「熊本弁」を使い、実の娘に成り済ましたのです。

この手口が去年の9月以降、急増。被害総額は4000万円にも上るといいます。今回、その詐欺グループを追う熊本県警・組織犯罪対策課の捜査に密着しました。

さらに、犯人の音声分析を専門機関に依頼。すると、驚きの分析が…!

横行する方言を使った振り込め詐欺。“ルフィ”の名を使ったあの特殊詐欺グループとの関連は?カメラが捉えた捜査の最前線。暗躍する詐欺グループを追いました。

■「横領」「訴える」言葉で…正常な判断力奪う

 去年9月。熊本市で暮らす70代の女性に、娘の名前をかたる女から電話がありました。

 女は「風邪をひいてガラガラ声になってしまった」と説明。そして、熊本弁を使い…。

娘役の犯人:「あのね、実は半年前ほどの話なんだけど」
70代女性:「はい」
娘役の犯人:「友達と一緒に株を買ったんだよね」
70代女性:「うん、うん」
娘役の犯人:「その株を買ったっていうお金が、実は友達の会社のお金を勝手に使って、買っとったったいね」

さらに、投資詐欺に遭い、お金を失ったと説明。

娘役の犯人:「金額も結構な額で、2人で1000万つたいね」
70代女性:「なーんね…。なら、半分ずつ、500万ずつ借りとった?」
娘役の犯人:「2人で友達の会社のお金を横領している状態なんだよね」
70代女性:「いや~、もう…」
娘役の犯人:「(友達の会社の社長から)『きょう中に返してくれんと訴える』と言われて。私、この後、消費者金融でお金を借りようと思って…」
70代女性:「だめだめ、それは。500万ならあるよ。お母さんが持っとる」

「横領」や「訴える」という言葉を使い、女性を不安にさせ正常な判断力を奪っていきます。

娘役の犯人:「そんな大金、借りていいの?」
70代女性:「うん、よかよか。あんたが、そがんこつばするなんて。思っとらんだった…」

■銀行職員が「振り込め詐欺では?」と聞くと…

架空の話を信じた女性は金を下ろすため、熊本市内にある銀行へ。その時、窓口で応対した銀行の職員が取材に応じました。

500万円という金額に職員が「振り込め詐欺ではないか」と聞くと…。

応対した銀行職員:「(70代女性は)『自宅で使うお金だから、心配しないで下さい。大丈夫です』と」

女性は「横領した」という言葉を信じたのか、娘のことは一切話さず、500万円を下ろし銀行を後にします。

しかし、その直後、今度は「500万円を下ろしたい」という老夫婦が現れたのです。

応対した銀行職員:「これは、もう怪しいなと思ったので。『詳しくお話を聞かせて頂けませんか』と言ったら、奥様が話をしてくれて。『実は娘が誰かにだまされて、500万円を払ってあげないといけなくなった』と」

「振り込め詐欺」だと確信した職員は警察に通報。一方、最初に500万円を下ろして帰った70代の女性は…。

応対した銀行職員:「翌日にお金を持って、(口座に)戻しに来ました」「『あなたが言った通り詐欺だったわ』と。娘さんに聞いて『そんな電話してないよ』と」

■ガラガラ声の男性から「電話がかかってきた」

熊本県内で相次ぐ詐欺電話。追跡取材班は「ガラガラ声の電話がかかってきた」という70代の男性に話を聞くことができました。

それは去年10月。犯人は、女ではなく男だったといいます。

振り込め詐欺の電話がきた70代男性:「ものすごいせきで。ゴホンゴホンいって。(電話を)かける人は役者ですよ。せきの仕方、途中の言葉の使い方、怖いと思った。絶対におじいちゃん、おばあちゃんはだまされますよ」

マニュアルがあるのか、手口も全く同じでした。不審に思った男性は…。

男性:「『とにかく家に来なさい』と言ったら来ない。そして『なんで(金を)出さんとね。出さんなら俺死ぬ』って言ったんですよ。5~6秒はそのままにしていたら、(電話が)ぷつっと切れて終わり」

■音声分析で“犯人像”と“ある可能性”が…

何か詐欺グループにつながる手掛かりは?我々は、犯人の音声分析を専門機関に依頼。すると、ある犯人像が浮かび上がってきました。

日本音響研究所 鈴木創所長:「犯人が熊本出身である可能性は非常に高い。気になった点を3点再生します。『きついつたいね』。しっかり『つ』が発声されている。この特徴が他にもありまして。『1000万つたいね』。これは熊本地方の特徴ではないかと思われます」

さらに、犯人の女の声から“ある可能性”があるといいます。

鈴木所長:「非常に(犯人の)女性は冷静。声帯の基本振動数が250ヘルツ前後でずっと推移。緊張した場合、声帯の振動数が高くなるが、そういうことがない。(振り込め詐欺の電話を)何回も経験しているのではないか。これだと警戒している人でも信用してしまう」

■方言使った“振り込め詐欺”地方で増加の理由

では一体なぜ、地方で方言を使った振り込め詐欺が増えているのでしょうか?

詐欺や悪徳商法に詳しい 多田文明氏:「東京でしたら標準語でいい。色んな詐欺グループが電話をかけている。そうなると、なるべく詐欺の電話が少なくて、警戒心の薄れた地域を狙っている」

関東などでは、振り込め詐欺への警戒心が高まっていることから、一部のグループが狙いを地方へ移している可能性を指摘。一方で、強盗など凶悪な犯行にシフトする詐欺グループもあるのでは、といいます。

多田氏:「(過去の振り込め詐欺電話で)お金はあるけど、だまされなかったという情報を再度、闇の名簿から抽出して強盗をした可能性がある」

■地道な捜査…被害者に“ある共通点”が浮上

「卑劣な犯行を未然に防ぎたい」。熊本県警の捜査員による懸命な捜査が続けられています。

熊本県警 組織犯罪対策課の捜査員:「最近、この車で(詐欺グループを)追い掛け回し過ぎて、だいぶ警戒されているんですよ。犯行グループの一味に『黒の(捜査車両)には気を付けろ』と」「(Q.(尾行を)まかれたりするんですか?)不自然なUターンをしたりはありますね」

捜査員が向かったのは、熊本駅。その目的は…。

捜査員:「(詐欺グループは)新幹線で来て、犯行後にまた新幹線で移動することが多い」「携帯電話を2台持っているとか。ずっと(駅前を)ウロウロしている人もいるので。『指示待ち』なのかなと気にして見たり」

受け渡し現場の防犯カメラの解析など、地道な捜査を続けるなか、被害者に“ある共通点”が浮上しました。

熊本県警 犯罪抑止対策室 芥川康浩警部補:「被害者の娘さんや息子さんは、被害状況を分析すると『同じ高校の出身者』ということが分かった。卒業名簿、クラス名簿が使われた可能性が高い」

■“暗号”のような表記で募集…これまで5人逮捕

さらに、詐欺グループの末端である「受け子」や「出し子」などが、暗号のような表記で募集されていることも判明しました。

芥川警部補:「受け子出し子を『UD』とネット上で書いたり」

実際にSNSで「UD」と検索すると、いわゆる「闇バイト」の情報が出てきました。

日給は5万円から15万円そして。受け子、出し子を意味する「UD」の文字があります。

次第に明らかになる、詐欺グループの実態。

熊本県警では、方言を使った一連の振り込め詐欺事件で、これまでに「受け子」や「出し子」など5人の容疑者を逮捕。現在も、捜査を続けています。

■“ルフィ”との関係は「否定も肯定もできない」

“ルフィ”と名乗る人物が指示役とされる特殊詐欺グループと関連は?捜査の最前線で指揮を取る山本康祐次席が取材に応じました。

熊本県警 組織犯罪対策課 次席(取材当時)山本康祐警視:「(ルフィたちとの関連は)全く否定もできないし、肯定もできない。反社会的な勢力も十分に関わってきているという思いで、捜査は進めている」

そして、息子をかたる犯人から電話がかかってきた男性は…。

振り込め詐欺の電話がきた70代男性:「老後の生活をしていかないといけない蓄えを取られたら、こっちが死ぬしかない。自分たちの親が被害に遭った時には、どうするのと、私は言いたい」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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