金平糖 / 小林私

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金平牛蒡

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「金平糖」作:小林私

川で泳ぐ魚のように、花冷えを疎む日々で
私たち気付かぬ内に何処へでも行けると思うの

例えば空の谷、海の端、電光の切れたコンビニ
或いは雨が渇いてくアスファルトを往来する蟻を踏むゴムの靴

快適な部屋でまた当社比の絶望を
数える為の単位を探す物語のなかで
借りてきた虎の威が恥ずかしくなる朝が来て
捉える為の美しさに目を焼かれている

畳縁踏み越えるように、忌まわしき事に務む日々で
頑なに静かな方に何処までも行こうと言うの

あの目が迸っていくほどその炎やその鼓動がただ呼応する度、
遊べば肌は焼かれてくらしい
韜晦するふりをする駄目なやつ

最適な暮らしでまた本物だって確かめている
言いたい為の真意に集う物笑いと同じで
毎日が腐乱臭にまみれ、絶望さえ高尚な営み
苦しむ為の息苦しさをまだ愛している

言葉が円を描いてその中心へと向かう運動の力が
周を変えてその形でいずれ固まる、金平糖のよう

川で泳ぐ魚のように、抱き寄せて共に寝付くように、
踊れずに立ち尽くすように、諦めて一人帰るように、
何処までも行ける指差す方に、でも頑なに静かな方に、
やけに暑い陽が射すとおり、意味さえないひとりよがり

快適な部屋でまた当社比の絶望を
数える為の単位を探す物語のなかで
借りてきた猫みたく黙って時折怯えて見せて
捉える為の美しさに目を焼かれている
苦しむ為の息苦しさをまだ愛している
喩える為の例示並べてこじつけて息する

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