年金支給日に聞く“生活実態”…75歳男性「カラッケツ」 86歳女性「月2.5万円」の理由(2023年3月11日)

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「年金支給日に聞いてみた」シリーズ第2弾。専門家によると、今年の年金受給家庭の支出は、月5000円ほど増加するとの見通しです。年金受給者の生活の実態と、物価高騰を乗り切るために実践している節約法を取材しました。

■73歳女性「なんとかして物価高」

年金支給日の2月15日、都内の銀行や郵便局の窓口には、多くのお年寄りの姿がありました。

夫と二人暮らし 女性(75):「(1カ月)13万円で、やりくりしてるかな。夫婦で(年金)13万円は少ないですよね。厚生年金に入っていたら、もうちょっともらっていたかも分かりませんけど」

「夫婦合わせて国民年金」で月に13万円。家計を圧迫するのは、取材で一番多かった“あれ”でした。

女性:「(光熱費が)先月と今月で1万円近く違ってますから、なんとかやりくりするのが大変。物価・(2019年に)消費税・光熱費が上がる。ちょっと大変ですよね」

夫と二人暮らし 女性(73):「(Q.年金の月額は?)12万円くらいです。45年くらい勤めましたので。厚生年金基金に入っていた。(夫は)私より2~3万円多いかな」

年金は、夫婦で一月25万円。

女性:「水道料金だと6000円だったのが8000円になってた。電気料金だと、いきなり1万5000円で、『何だ、これ』って。なんとかして下さいよ、この物価高」

■75歳男性「支給日にカラッケツ」

この男性は「年金を下ろしてきたばかり」だという宮崎賢一さん(75)。

通帳を見せてもらうと、支給額は17万円。1カ月当たりおよそ8万6000円。職を転々としていたため、厚生年金を納めたのは20年ほどだったといいます。

宮崎さん:「貯蓄はほとんど手元に残らない生活をしてきたから。特にお風呂に入ると、ガス代が倍になってた」

下ろしたばかりの年金で用事があるという宮崎さん。着いて行くと、そこはコンビニでした。

宮崎さん:「水道代が払えずに、水道代やっと払えた」

支払ったのは、滞納していた10月と11月分の水道代3704円と、先月の電気代3792円です。

次に向かったのは、郵便局。先月購入した通販商品の支払いだといいます。

宮崎さん:「(通販で)お茶、せんべい、おでん。6万~7万円、年金支給日になると払ってますから。支払日になるとカラッケツ」

最後に、どうしてもと向かったのは、文房具店です。

宮崎さん:「これです。これを買いたいんですね」

購入したのは大学ノート。何に使うのでしょうか。

宮崎さんは、27年前に母親を亡くし、それからは一人暮らし。住んでいるのは、借地に建てられた築50年以上の一軒家。部屋の中に山積みになっていたのは…。

宮崎さん:「見て下さい、通販の箱。『これで食べている』と言ってもいいくらい」

年金をやりくりして通販で食品を買うのが楽しみだといいます。

宮崎さん:「これが、広告を貼り付けるのが好きで」

もう一つの楽しみが、大学ノートに貼り付ける新聞や雑誌のスクラップ。節約のため、領収書なども、こまめに貼られていました。

宮崎さん:「このままでいくと、自分の葬儀代もままならないから。今年こそは…」「(Q.貯金したい?)したいどころじゃないですよ」

■支給日に合わせ…“特売”実施

一方、都内にある激安で人気のスーパーでは、年金支給日に合わせて特売セールが行われていました。

毎日の食事に欠かせないお米や、大根は一本79円。豚肉は3割引きと、食料品が大安売り。

安いものを求めて、店内には多くのお年寄りが。お目当ては、もちろん特売品です。

年金5万円/月 女性(79):「ほら、野菜が半額だったの!50円なのよこれ。これと、ちょこっと肉を買って終わり」

年金13万円/月 女性(84):「安売りがあると買いに来たり、まとめ買いする。お肉もまとめて冷凍して。倹約しながら買ってる」

■光熱費がさらに?「年末まで気抜けない」

1月の消費者物価指数は、41年ぶりの高水準。専門家の試算では、去年の年金世帯の支出が5900円増加。今年も…。

みずほ銀行チーフエコノミスト 小林俊介氏:「(今年の)年金受給家庭(二人世帯)の支出は、月々5000円増える。来年も月々4000円増える」

特に注目するのが、光熱費。大手電力各社が4月以降3割から4割の値上げを申請し、東京電力では、月2600円という増額に。

さらに、政府による負担軽減策として1月から9月分まで光熱費の値引きが行われ、標準世帯で電気ガス代が3700円程度減額されますが、10月以降については未定です。

小林氏:「(軽減策の)補助金が切れた10月以降については、もう一段物価が上がる可能性があるので、年末まで気が抜けない」

■独自の方法で節約「貧乏でも楽しい」

今年も続く物価高騰。皆さん、どんな節約をしているのか。聞いてみました。

年金5万円/月 女性(79):「エアコンは、あまりつけない。ホットカーペットと小さい湯たんぽを足に挟んで。温かいのよ、けっこう」

年金3万円/月 女性(78):「お風呂を3回のところを2回にしたり。食べない飲まない。1日1食」

夫婦で年金13万円/月 女性(73):「着るものは節約していて、娘夫婦からおさがりを貰ってます。これも、娘の夫から貰ったやつ」

取材中、「独自の方法で節約している」という人がいました。夫婦で合わせて、年金が月10万円だという小林さん(80)。

小林さん:「家に狭いけど庭があるんで、野菜を植えたり。あとは、食べられる野草を探す」

自慢の庭を見せてもらいました。

小林さん:「この奥になってる」

自宅の裏にある庭に、小さなミカンの木がありました。

小林さん:「これが今なってるやつ。袋かぶってるの。あと、ここにトマトを植えていく。ジャガイモは、ここら辺に植えようかと。この菊も、花が咲くと酢の物にして食べられる」

こうした努力で、月の食費は3万円に抑えているといいます。

小林さん:「手間かかるけど、お金はかからないから。貧乏でも楽しいです」

■86歳女性…年金“月2万5000円”の理由

年金支給日に特売を行っているスーパーで出会ったのは、淀野よしのさん(86)。

淀野さん:「年金は5万円ちょっとだもんね。2カ月に1回」

年金はひと月当たり、2万5000円。何か理由が…?

スーパーから自宅までは、歩いて20分。

淀野さん:「やっと帰ってこられた。果物がなかったから買いに行った。今夜は、湯豆腐だね」

2DK家賃5000円のこの都営団地で、息子と2人で暮らしているという淀野さん。実は以前、立派な持ち家がありました。

淀野さん:「160坪の家に昔はいたのよ。だから、こんな狭い所じゃなくてね」

夫婦で包装や梱包(こんぽう)などの会社を営んでいた淀野さん。都内に160坪の仕事場兼自宅を所有していましたが、20年前、経営が悪化。自宅を手放し、会社も倒産したといいます。

淀野さん:「裸一貫で所帯を持って、160坪の土地を買って家を建てたの」

夫の健一さんは8年前に他界。年金は、夫に任せ「きちんと払っている」と思っていたといいます。未納期間があったためか、受給額は月2万5000円。国民年金のみで、遺族年金はありません。

淀野さん:「2万5000円じゃ食べられないから。息子に食べさせてもらってる」

厳しい年金生活でも、毎日欠かさないのは、夫へのワインのお供え…。

淀野さん:「お酒が好きな人だったから、ワインを毎日欠かさずあげてる。昔の家を思い出して、良い時あったから」

年金支給日に出会った様々な事情を抱えた人たち。そこには、厳しい現実と向き合い生きる姿がありました。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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