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オプジーボ　Programmed Cell Death-1
癌が増加することは、関節リウマチなどの自己免疫疾患と花粉症などのアレルギー性疾患が増加することを意味します。癌細胞の細胞膜表面には、正常細胞にないペプチド（短いタンパク質）が出現します。ですから、正常細胞でもさまざまな異常タンパクが増加するので、癌が増加することは、新種の自己免疫疾患が増加することでもあります。花粉症なども、がん予防をすれば減少する可能があります。
癌が増加する原因の一つが、　細胞傷害性T細胞（CTL）（キラーT細胞）の免疫をすり抜ける能力を癌細胞が獲得しているからです。
図で解説すれば、簡単そうですが、複雑なメカニズムが隠れています。
がん抗原とMHC（主要組織適合性複合体）は、がんの免疫療法において重要な役割を果たします。がん細胞表面にあるMHCクラスI分子と結合したがん抗原ペプチドを認識する細胞傷害性T細胞（CTL）を活性化してがん細胞を攻撃します。
細胞表面にCD8（キラー細胞側）という分子を持ち、クラスI MHC分子と結合します。
（ヘルパーT細胞からの指示を受け、異常細胞を認識します。）
標的細胞に結合すると、細胞傷害性顆粒を放出します。
細胞傷害性顆粒には、グランザイム（分解酵素セリンプロテアーゼ）とパーフォリン（侵入細胞溶解タンパク）が含まれています。
グランザイムとパーフォリンが標的細胞の細胞膜に孔を形成し、細胞内に侵入してアポトーシスを引き起こします。
免疫チェックポイントとは、異物として攻撃するかしないかを決める部分であるということです。敵か味方かを判別する装置です。PD-1（Programmed Cell Death-1）は、攻撃する白血球が持っています。
癌細胞が持っているPD-L1遺伝子の発現異常は、「3′非翻訳領域」と呼ばれる、蛋白質に翻訳されない部分の異常が原因で起こります。
非翻訳領域（ひほんやくりょういき）・イントロンとは、タンパク質に翻訳されない遺伝子ゲノム上の領域です。遺伝子発現の制御や染色体構造の維持など、重要な機能を担っていると考えられています。
正常な3′非翻訳領域・イントロンが失われる結果、PD-L1の遺伝子発現が上昇するという、新しいタイプの遺伝子異常です。
タンパクを直接つくる遺伝子の異常ではなく、タンパク質に翻訳されない遺伝子ゲノム上の領域の異常です。遺伝子領域を詳細に観察すると、実はタンパク質に翻訳される部分（エクソン）とそうでない部分（イントロン）があります。イントロンは50％以上存在します。以前は「ジャンクDNA」と呼ばれていました。
また、がん細胞を含むさまざまな細胞で、最新のゲノム編集技術を用いてPD-L1の3′非翻訳領域に構造の異常を生じさせることによって、PD-L1の発現が顕著に上昇することが確認されました。
PD-L1陽性とは、がん細胞の表面にPD-L1というタンパク質が一定以上発現していることを意味します。これによってキラー細胞による癌細胞の排除が出来ない状態になっているのです。
肺がんにおいて承認されているPD-1阻害剤は、テセントリク（一般名：アテゾリズマブ）、イミフィンジ（一般名：デュルバルマブ）の二種類、PD-1阻害剤は、キイトルーダ（一般名：ペムブロリズマブ）、オプジーボ（一般名：ニボルマブ）の二種類、CTLA-4阻害剤はヤーボイ（一般名：イピリムマブ）、トレメリムマブ（一般名：イジュド）の二種類です。
みなさんがよくご存じのオプジーボ（免疫チェックポイント阻害薬）というお薬があります。
PD-1（Programmed Cell Death-1）
PD-1は、細胞死誘導時に発現が増強されるタンパク質として、1992年に京都大学本庶佑研究室にて単離同定されました。I型膜タンパク、免疫グロブリンスーパーファミリー分子の1つです。活性化したT細胞、B細胞、マクロファージに発現しており、リガンドにはPD-1 ligand 1（PD-L1）とPD-L2との2つが知られている。
PD-L1（Programmed cell Death ligand 1）は、癌細胞の表面に発現するタンパク質で、免疫応答を抑制する役割を担っています。これを癌細胞が持っていると細胞免疫を担当するTリンパ球の表面にあるPD-1（Programmed cell Death 1）と呼ばれるタンパク質に結合し、免疫細胞の働きを抑制して癌細胞を攻撃できないようにします。
オプジーボは攻撃T細胞の表面にあるPD-1に、抗体として結合して、攻撃中止の命令を打ち消します。これで攻撃T細胞が持つ本来の攻撃性が復活します。
では、癌細胞が持つ免疫回避タンパクのPD-L1（Programmed cell Death ligand 1）はどこが大本の遺伝子でしょうか。それは遺伝子マップ9p24.1となっています。これは第９遺伝子短腕24ということです。
この部分の遺伝子が障害を受けて、癌化したわけです。これで攻撃T細胞の細胞免疫の網を潜り抜け、成長したわけです。ですから、細胞障害性のシスプラチン製剤と大きな違いがあり、シスプラチンがむやみやたらに撃ちまくる機関銃とすると、免疫チェックポイント阻害薬であるオプジーボはレーザー誘導ミサイルで、癌細胞のみを正確に破壊します。
それゆえに、もしも癌の増殖の原因が、上皮成長因子受容体やHER2タンパクやホルモン核内受容体など他になく、癌細胞が持つ免疫回避タンパクのPD-L1オンリーワンであれば、完全治癒するわけです。オプジーボは、ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑（ほんじょ たすく）氏が開発に携わった抗がん剤で、夢の薬・奇跡の薬とも呼ばれたのです。