津波避難を考える 車で避難した夫婦の体験談…渋滞「あと30秒遅れていたら」 スムーズに逃げるために (23/11/18

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福島県では、津波到達前に表示が切り替わる全国で唯一の「防災対応型信号機」が導入された。信号機が災害モードに切り替わると、津波の到達が予想される沿岸部に進ませないように、車両が進行して良い方向だけが示される。
実際に、東日本大震災のときはどうだったのか?大津波警報が発令された時に車で避難した人を取材した。

<妻と孫たちと無我夢中で避難>
福島県相馬市磯部地区。東日本大震災の津波で、地区では約250人が犠牲になった。当時、磯部地区に住んでいた佐光斗南さんは、妻の八重子さんと3人の孫を車に乗せ避難した。
「妻の早く早くっていう言葉だけ、記憶にあるのは。あとは無我夢中だね」

<みんな逃げるのに精一杯>
助手席に乗っていた八重子さんは、国道6号線が避難する車で混雑していたと振り返る。「入れないのよ。みんな逃げるのに精一杯で。間に入れてもらえなくて、とにかく私は後ろで早く早くって。それで向こうから来る車がなかったので、たまたま入れて」と語った。
当時 津波は、海岸から5キロも離れた国道6号線にも迫る勢いだった。
八重子さん:「あそこ入れなかったら、波に多分飲まれていたと思う」
佐光さん:「あと30秒・1分遅れてたら、生きてはいないと思う」

<家族を助けに向かった知人>
ただ、今でも思い出すことがある。家族を避難させようと職場から自宅に戻り、津波に飲み込まれてしまった近所の人のこと。互いの家をよく行き来する仲だった。
「同僚から帰るなって言われたんだけど、あのとき嫁さんと孫二人が家にいるって分かってたもんだから、戻ったんだよね」と八重子さんはいう。警察が海側に向かう車の通行を規制する前に、家に戻ってしまったとみられている。

<福島県で導入 防災対応型信号機>
安全な場所から危険な場所に近づかせない信号機。逆に海側から避難してくる車が信号で止まってしまわない様、海側からくる車から見える矢印の表示時間を長く設定している。

<車での避難はリスクも>
佐光さんが「津波から逃げる車で混雑した」と話すように、そもそも津波からの避難に車を使うのはリスクもある。
東京大学大学院の客員教授で防災行動や危機管理の専門家・松尾一郎さんは「渋滞で車が進まないということは、福島のみならず東日本大震災では至るところで発生した。徒歩避難といっても、避難所まで遠い方や一人で避難出来ない方への対応を考えると、車に頼らざるを得ない。そこで重要なのが、車を使っても渋滞を起こさない避難の在り方を日ごろから考えておくということ。防災型信号機は増やすべきだと思う。リモートで操作できれば、迂回を含めいち早く避難誘導でき、命を守ることにつながる。これをどう活かすかは、市町村や警察、道路管理者、地域住民が一緒に話し合う場が必要なのでは」と話した。

<やむを得ない場合は最小限の台数で>
福島県内でも、独自にガイドラインを策定している自治体がある。いわき市では、2016年の津波警報発令時に市内10カ所で渋滞が発生したことを踏まえ「原則徒歩」としている。ただ半径500メートルに津波避難場所や高台がない場合、歩行に支援が必要な人などは、自動車による避難はやむを得ないとしている。
またその場合も、乗合いを心がけるなど最小限の台数で、遠くの内陸部に避難することなどが示されている。

<到達時間・浸水域・避難経路を日ごろから>
防災マイスターの松尾一郎さんは、津波発生時の避難に備えてやっておくべきこととして「あの震災から12年経ち、どんな津波が来たか記憶が薄れてきている。東日本大震災と同じ津波というより、日本海溝・千島海溝に伴う津波が来ることを考えた時に、新たなリスクにさらされる。そのとき、津波がどのくらいで来るのか・どのくらい浸かるのか、それに対してどう避難するかをいまから考えておくこと」と話した。

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