報道ゲンバ：餌代高騰！酪農家ギリギリの経営

気になるニュースの現場を、記者が取材する「報道ゲンバ」のコーナーです。さまざまな食品が値上げされる中、その一つに牛乳があります。生産コストの中で最も大きな割合を占めるのが、「エサ代」です。牛乳代が上がった背景には、酪農家のギリギリの経営があるようです。酪農のゲンバを中田記者が取材しました。も～も～イオンモール白山の斜め向かいにある、高来（たかぎ）牧場です。現在午前７時です。酪農家の朝は早く、午前５時半から牛舎のそうじなど行っているということなんですね。これからエサやりとうかがっていますが…高来さんきょうはよろしくお願いします。酪農家の高来（たかぎ）直人（なおと）さん。石川県酪農業協同組合の組合長も務めています。創業１９５３年。父の代から酪農家です。牛舎では搾乳（さくにゅう）用のホルスタイン５３頭を飼っています。実際に酪農業界はいまどうなんですか？厳しい状況にあります。いまだかつてない・・・やはりエサ代が５割ほど上がったからですね普通の経営で５割あがると致命的ですよね。およそ１年前は、１カ月のエサ代が２００万円ほどでしたが、現在は３００万円に。あっという間に１・５倍に跳ね上がりました。高来（たかぎ）さんは妻の小弓（さゆ）美（み）さんと夫婦２人で牧場を営んでいます。３人の子供は、別の仕事につき独立しました。労働時間は、朝５時半から夜１０時半ごろまで。その間に、１６回に分けてエサやりをします。エサは、「トウモロコシを主原料とする配合飼料」や「牧草」など。アメリカやオーストラリアなどからの輸入品です。県内には牧草を作る土地が少なく、輸入品に頼らざるを得ません。エサ代高騰の背景には、ロシアのウクライナ侵攻のほか、円安、そして中国による大量の買い付けがありました。高騰する「エサ代」しかし、牛を健康に育てたっぷりと搾乳するにはエサを減らすことはできないと酪農家は頭を抱えます。こうした中、高来さんが経費削減のために取り入れているのが、国産のエサ、「青（あお）刈（が）りの稲」です。これは、実る前に刈り取った米なんです。高来（たかぎ）牧場ではエサ全体の２割を「青（あお）刈（が）りの稲」にしています。輸入飼料より３分の１くらいの価格で手に入るので経営にすごく役に立つということ。じゃあみなさんやればいいじゃないですか？そうやればいいんです。僕はおすすめしているんですけど、いかんせんこれは生ものなので保管が難しいんです。「青刈りの稲」は収穫後、真空状態にして乳酸発酵させなければなりません。手間がかかるほか、保管場所の確保が難しく、なかなか酪農業界に浸透しないのが現状です。「乳価（にゅうか）」、いわゆるミルク代は新潟にある指定団体「北陸酪農業協同組合連合会」が酪農家と乳業者の間に入って、決定します。現在は１キロ１４０円です。１カ月におよそ４０トンの牛乳を生産する高来（たかぎ）牧場には月に５６０万円のミルク代が入ります。価格交渉により今年８月には乳価（にゅうか）が１キロ１０円アップする見通しです。そうなれば１カ月のミルク代は５６０万円から６００万円に上がりますが、エサ代の高騰をカバーする金額にはなりません。今、電気代があがるというのでどうしようかな？と月１０万くらは電気代かかりますんで、それが４割あがったら１４万くらいになりますよね。大丈夫かなと。（ミルクを冷やす）クーラーだけでも４００万円しますし、搾乳ユニットは８００万円ですよ。特殊な機械なんで１個当たりが高いんですよね。生産コストの高騰は、商品の価格に転嫁します。各メーカーの牛乳は、去年秋ごろを境に２０円から３０円ほど値上がりしています。「やっぱり高いよね。でも仕方ないよね」「牛乳好きなんでね。欠かせないんで。ちょっと高くても？買っちゃうね。電気代と一緒で」「ちょっと上がったな～とは思うんですけど、好きな牛乳とかだとあまり気にせず私は買っちゃう方なんですけど」かつて価格の優等生と言われた牛乳。アルビスでは先月まで、プライベートブランドの牛乳を税別１７８円の据え置き価格で提供してきました。今月からは２０円アップにしたいところでしたが…牛乳に関しましても当社自社のプライベートブランド商品こちらを４月度は１９８円というような値上げを考えておりましたが、少しでもお客様の家計を応援したいというところで１８８円で提供させていただきたいというところで考えております。消費者にも、酪農家にも厳しい昨今。高来さんに、現在の心境をうかがいました。僕も６５歳なんで、後継者ですよね。ぎりぎりの経営では誰も若い人には魅力がないと思うんで・・・そこですよね。（あと５年、１０年はもしかしたら我々が頑張ればいまの牛乳の生産は維持できるかもしれませんがその後ですよね。石川県産の牛乳がなくなるかもしれない。それくらい心配しています。）