魂の叫びを歌声に…映画「キリエのうた」岩井俊二監督が抜擢したアイナ・ジ・エンド 圧巻の歌唱のヒミツ

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映画を語るシネマカフェ番外編。今回は岩井俊二監督の最新作映画「キリエのうた」を取り上げます。
「音楽映画」というこの作品。映画初主演となったアイナ・ジ・エンドさんと岩井監督に作品について、音楽について、聞きました。

13日公開の映画「キリエのうた」主人公は歌うことでしか声が出せない路上ミュージシャン・キリエ。キリエの歌がつなぐ4人を描いた出逢いと別れを繰り返す13年間の物語です。
この作品で主演を務めたのはアイナ・ジ・エンドさん。
今年6月、惜しまれながら解散した楽器を持たないパンクバンドBiSH(ビッシュ)のメンバーで、奇抜なパフォーマンスと圧倒的な歌唱力で人気を博しました。
BiSHではほぼ全曲の振り付けも担当。現在はソロとして活動の幅を広げるアイナ・ジ・エンドさんに聞きました。

【アイナ・ジ・エンドさん】
Q初主演、オファー受けての気持ちと、岩井監督と作品を作った感想を聞かせてください。
「最初にお話をいただいた時は本当に私でいいんですかという驚きとかっていうよりかは不安が多かったんですけど。岩井俊二さんだからやりたいって思えたのが大きかったですね。
大好きだったので。
(岩井監督は)すごくピュアなのか、すごくよどんでいるのかわからないというか。この映画にもあるんですけど、なんだかちょっと薄暗いシーンとか、そういうのを切り取るのがとっても生々しくて上手と言うと上からみたいですけどとても好きな感じで。一言じゃ言い表せない不思議な方でした」

岩井俊二監督は「スワロウテイル」「リリイ・シュシュのすべて」などこれまでにも音楽とともに物語を紡ぐ作品を手掛け、今回はおよそ20年ぶりの“音楽映画”となりました。
そんな岩井監督がアイナ・ジ・エンドさんを起用した理由は。

【岩井俊二監督】
「最初に彼女を知ったのが、あるライブに出ている映像を目撃した時だったんですけど、ちょうどその時に僕はこの物語を書いていたので、なんかもう直感的に『この子で撮れないだろうか』と思って。
それから調べ始めて、BiSHっていうグループにいるのを知ったりとか、ソロでも作詞作曲をやっているとか、色々なことを知れば知るほどすごい才能の持ち主だなって。
類まれな歌声というか、バイオリンやチェロを奏でるような研ぎ澄まされた、それでいて温かみのある声で、すごいインパクトがありましたね」

岩井監督が一瞬でほれ込んだ才能。
映画初主演となったアイナ・ジ・エンドさんはどのように役作りをしたのでしょうか。

【アイナ・ジ・エンドさん】
「自分も割と歌とかダンスしか生きていく方法がないなと思ってずっとやっているんですけど、主人公のキリエっていう子も歌を歌っている時しかうまく人とコミュニケーションを交わせない、魂をのせる唯一の表現方法が歌だったみたいな。
役を作るというよりは、自分の心の中にある本当の『歌が好き』っていう気持ちだけを引っ張り出してきて表現にぶつけるっていう感じでした」

そんな主人公・キリエのマネージャーを買って出る謎めいた女性「イッコ」を演じたのは広瀬すずさんです。

【アイナ・ジ・エンドさん】
「広瀬すずちゃんと一緒に着替えた時に、雪の日で寒かったので、いつもだったら先着替えていいよとかお互い譲り合ったりするところを、もう一緒に行こう!って言って、一気に距離が縮まって嬉しかったですね。
すずちゃんは本当にすごすぎて、何もわからない私でさえもすずちゃんのすごさはわかりました。
竜巻みたいなお芝居をされる方で、まわりの人を巻き込んでいくんですよ、自分みたいな素人のことも巻き込んでくれるもんで、勝手に役になれるっていうか。
独りよがりのお芝居を決してしない、相手がいての自分だとかを常に考えてらっしゃる女性でした」

この映画では音楽を軸に物語が進んでいきます。

【岩井俊二監督】
「音楽って、すごく人の心を癒したり勇気づけたり、そういう風な印象がありますけど、描いている題材などを見ると、結構暗かったり社会的な闇や人と人の心の闇を描いているものもすごくたくさんあって、音楽を映像化していくっていうアプローチをすると、どんどんそこの部分が出てくる。
かつて『スワロウテイル』とか『リリイ・シュシュのすべて』というある種の音楽映画を作ってきたんですけど決して明るくなかったんですよね。
それって偶然ではなかったんだなと。(今回の作品で)音楽の何たるかというのを改めて自分の中で感じることができたというか、触れることができた、そんな気がしますね」

様々な感情を揺さぶり心を引き付ける音楽の存在感。

【アイナ・ジ・エンドさん】
Qアイナ・ジ・エンドさんにとっての歌の力、表現についてはどう捉えていますか?
「この子のこと励ましたいなと思った時に、何もうまく言えない時ってあるじゃないですか。歌だったら叫べるというか、飛び込んでこいよって言える。歌詞の中だったら何にだってなれるっていう、そういう気持ちに歌はさせてくれるので。
色々なうまいと言われる歌唱方法があるんだと思うんですけど、自分も勉強していく中で、なんだかそういうのにとらわれない本当の魂の叫びっていうのは何だろうかというのをずっと研究していて、『キリエのうた』ではその心の内からのシャウトっていうのが音色に乗せられたんじゃないかと思うので、良かったら映画館で体感してほしいなと思います」

魂を震わせる圧巻の歌声を堪能できる映画「キリエのうた」は13日、公開です。

<メモ>
◆生演奏の音を現場でそのまま撮影するなど、音へのこだわり。
◆仙台出身の岩井監督。東日本大震災直後の自身の感覚も脚本に反映。
◆映画の中でアイナ・ジ・エンドさん書き下ろしの6曲も入っている。

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