過客「季語散策Vol.1『第一話 老いらくの恋』」

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妹が垣根三味線草の花咲きぬ  蕪村
(いもがかきね しゃみせんぐさの はなさきぬ)

三味線草とはナズナのことです。
白い小さな花のあとに三味線のバチのような実をつけることから三味線草とよばれています。

蕪村は京都の芸妓「小糸」に入れこんでいました。
その関係は客と芸妓の関係を超えたものであったらしく、一門の長老から苦言を寄せられていました。
蕪村はこうした周囲からの忠告で、天明三年ついに小糸との縁を切りました。
その八ヶ月後に蕪村は68歳の生涯を閉じました。
ナズナの姿に蕪村の小糸への未だ断ち切れぬ想いがこめられているのでしょうか。
小糸の家の垣根には三味線草の花が咲いている。
しかしもうその門を開けて入ることはできません。
そして蕪村はもう一つの句を詠んでいます。

老いが恋忘れんとすれば時雨かな  (蕪村)
(おいがこい わすれんとすれば しぐれかな)


原稿&構成:黒木健一
ナレーター:宮内メグ
BGM: TAM 御伽草子

編集:中原久遠

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