「橋にも寿命がある」 高速道路リニューアル 開通から最大規模の工事の現場に密着…技術が大幅に進歩 かつては1か月かかった作業が今では20分で “働き方改革”の波が現場にも

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私たちが普段利用している高速道路。使用開始から年月がたち、補修が必要となっている区間もあります。開通以来最大規模のリニューアル工事の現場に密着しました。

 工事が行われていたのは、道央自動車道の千歳川大橋。江別西インターチェンジと江別東インターチェンジの間にある、長さ約1キロに及ぶ橋です。33メートルの区間2か所が工事の対象です。

 「リニューアルプロジェクトで、床版の取り替え工事を進めている」(NEXCO東日本 三膳 和馬さん)

 橋は大まかにいうと土台となる「橋脚」、道路を支える「桁」、そして、車が走行する道路部分の「床版」でできています。この、床版を取り替える大規模な工事が行われたのです。

 約2か月間にわたり片側車線を規制し、対面通行にして工事を行いました。

 高速道路の利用者に不便を強いながらも、このような大規模な工事を行わなければならない理由とは。

 橋の専門家、林川俊郎北大名誉教授は。

 「橋にも寿命がある。床版の上を車が走るので、一番最初に傷むのは床版。床版がだんだん薄くなると、衝撃が加われば穴が開いてしまう。事故が起きたら困るので、予防保全として早めに手当てする」(北海道大学 林川 俊郎 名誉教授)

北海道の物流を支える大動脈

 北海道で初めて開通した高速道路は北広島・千歳間の23.3キロ。札幌オリンピックの前の年、1971年のことでした。

 現在では総延長が約1192キロに。北海道の交通や物流を支える大動脈となっています。

 長く北海道の交通ネットワークを支えてきた高速道路。床版の劣化も進んでいます。橋の下から床版を見てみると…。

 「白い亀甲状のようなひび割れが、床版下面まで入っている状況。上面はかなり劣化が著しくなっている」(NEXCO東日本 三膳さん)

 今度は床版を上から見てみます。アスファルトをはがすと、どんな状態になっているのでしょうか。

 「床版の上面が削れて、鉄筋が露出している状態。重交通による繰り返しの疲労でひびが入った所から、水分や塩分が浸透して損傷が進行していく」(三膳さん)

北海道ならではの過酷な気象条件も

 今回の工事対象の千歳川大橋を含む札幌・岩見沢間は1983年に開通。交通量は当時と比べ6倍に増えています。さらに、北海道ならではの過酷な状況も、床版の傷みに密接に関係しているのです。

 「積雪寒冷地で、冬場は塩分を多く含んだ凍結防止剤をまく。本州と比べ、北海道の道路は非常に過酷な状況で使われている」(北海道大学 林川 名誉教授)

 冬に散布する凍結防止剤は、海水の6倍にも及ぶ塩分濃度になっています。アスファルトのひび割れから床版に塩分が浸透し腐食が進んでしまい、雪が積もらない地域と比べ損傷が激しくなるのです。

 これまではその都度手当てしてきましたが、今回、床版そのものを取り替える抜本的な工事を行いました。

働き方改革が工事にも影響

 約2か月間にわたる対面通行での工事。利用者からは、こんな声も。

 「夜間など、車通りが少ない時にやった方がいい気がする」(高速道路の利用者)

 工事の際に通行車線に破片が飛ぶなどすると大事故につながりかねないため、細心の注意を払わねばなりません。

 交通量の少ない夜間に作業をすれば、事故の心配や利用者への影響も軽減できますが、こんな背景も。

 「いま建設業界でも働き方改革が進んでいる。この工事現場は残業なしで週休2日で工事を進めている」(NEXCO東日本 三膳さん)

 2024年4月から、建設業でも時間外労働の規制が強化されました。長時間労働是正のため週休2日を確保できる工期の設定が行われています。

 働き方改革を進めるため、さまざまな技術の進歩が後押ししています。

 この日は、新しい床版の設置作業。33メートルの区間に1枚約17トンの床版を11枚設置します。

 かつては現場でコンクリートを流し込んでいて、固まるまで約1か月かかりました。それが、現在ではどれくらいの時間が必要かというと。

 「1枚設置するのに大体20分。昔は現場でコンクリートを打って床版を作っていたが、今は工場で作って持ってきている」(NEXCO東日本 三膳さん)

 あらかじめ工場で作った床版を輸送することで、工期や労働時間の短縮を可能にしたのです。

 性能も進化しました。新しいものは耐久性と防水性が向上し、天候に左右されることなく同じ品質で製造できるメリットもあります。

高速道路を支える職人技

 さまざまな技術の進歩が実現しましたが、工事の安全性を確保するのは現場で作業する人たちの技術があればこそ。まさに、職人技の積み重ねが高速道路を支えています。

 「設計値は15ミリ以内の誤差。ずれてしまうと、一からやり直し」(NEXCO東日本 三膳さん)

 ミリ単位の調整をしながら素早く作業を仕上げます。

 設置し終えた床版には、防水性を高めるコーティングを施します。

 そして、床版の上をアスファルトで舗装。延長66メートルの区間に23枚の床版を設置し、大規模なリニューアル工事は終了しました。

 「以前と見比べると、かなりきれいになりとても気持ちがいい。利用客の安全性や道路の耐久性を上げていくのは、やりがいのある仕事」(NEXCO東日本 三膳さん)

 高速道路のネットワーク機能を今後も保っていくためのリニューアルプロジェクトは、この後も続きます。

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