地歌「宇治巡り」 (JIuta : Uji - Meguri) 阿部桂子、藤井 久仁江、山口五郎

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宇治巡り(うじめぐり)


  万代(よろずよ)を、摘むや茶園の春風に、寿添へて佐保姫の、
  賑はふ袖の若緑。人目をなにを初音。霞を分けて青山の、
  小松の城や綾の森、千歳障りもなしむしに、
  齢ひ老いせぬ姥昔(ばばむかし)。誰にも年を譲り葉の、千代の緑の松の尾の、
  神代の末の後昔(あとむかし)。光を添へて園の梅、なお白梅の色香にも、
  深くぞうつる川柳。湖水越すだに宇治の波、初花見する山吹の、
  花橘の匂ふてふ、夢を結ぶの折鷹や、小鷹の爪に枝しめて、
  木蔭も多き一森の、喜撰の庵(いほ)の夏の峯。滝の音をも菊水の、
  朝日山の端(は)、薄紅葉、高尾の峰に雁がねの、あさる声々笠取の、
  数万所(かずまんどころ)面白や。心を澄す老楽(おいらく)は、祝ひの代(しろ)にうたふ舞鶴。

解説
[調弦]
三絃:本調子-二上り-三下り
箏:半雲井調子-平調子-中空調子

[作曲]
松浦検校
箏手付け:八重崎検校

[作詞]
田中幸次

[他]
京風手事物。松浦四つ物の一つ。
宇治の茶の銘をつづって(歌詞中の太字)春・夏・秋の風情を歌う。
手事は前後二回あり、マクラ・本手事・チラシ。
かつての許し物。

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