安楽死が合法の国で起こっていることを読んで。精神科医の感想

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00:00 OP
03:00 Q:精神科医としてどのように受け止められましたか?
06:02 Q:日本の精神科医の中からの安楽死を認めるべきだと主張する声
09:35 Q:迷惑な患者問題
13:33 Q:死なせる、殺してあげる役割が医療に託されること
16:36 Q:医療の性善説が前提になっている問題
19:04 Q:社会問題に対して安価で安直な解決策となりかねない
20:56 Q:人が認知的不協和を引き受けることの困難
24:20 Q:誰を救うかという鑑別
29:58 Q:医師が殺すことを合法的な行為として担われること
33:44 本日の宿題

本日は『安楽死が合法の国で起こっていること』というちくま新書さんで出されている本、児玉真美さんが書かれてる本の紹介というか、本を読んだ感想を中心に色々話します。

とても良い本で僕も衝撃を受けて、ぜひ一緒に話してみたいな、と。
話した中でどんなことが生まれるのか、どんな気持ちになるのか、そしてそれを皆さん、視聴者さんと見ることでどんなことが起きるか、どういう風に考えていけばいいんだろう、ということを色々考えて、うまく言えてないですけど、対談を申し込んだんです。
いくつかやりとりのラリーがあって、自分の頭の中の整理も兼ねてこの動画を撮りたいと思います。

臨床をしていると、患者さんから安楽死の話を振られることはあります。
もう死にたいです、安楽死をさせてください、安楽死ができるように診断書書いてください、と言われることがあるんですけど、もちろんお断りしてます。
あなたはよくなりますよ、と言います。

それでわかってくれる患者さんもいれば、不満を持ったり、怒ったり、怒ったついでに口コミ1をつけていく人もいるわけです。
そこでどういう会話をしているのか、どこまで深く話をしているのかというと、説明するのは難しいんですけど、そういうことが実際臨床であります。

でも僕自身が恥ずかしながら安楽死について詳しくはないです。
それを中心に学んできたこともないので、こういうYouTubeチャンネルを継続していくにあたって、ただ教科書的なことを伝えていくという段階はもう過ぎていて、精神科医なら誰でも知っているよ、というところをただ僕が動画で説明するところは、もうステージとしては終わっているんじゃないかなと思っていて、次の段階に今入りつつある。
つまり、もうちょっと深い話をしていける。

それぐらいチャンネルや視聴者さんも含めて、このコミュニティが成熟した段階なんじゃないかなと僕は思っていて、対談企画というのもちょっとずつやっていくことを考えているんですけども。
そういう経緯がありました、と。

いくつか児玉真美さんから質問をもらっているので、一個ずつ答えていこうかなと思います。

■質問に答えます

Q:精神科医として、拙著をどのように受け止められましたか?

前半と後半それぞれに対して、ということであります。
前半は、安楽死をめぐるやりとりです。
色々な事件があった。
安楽死が一度合法化されたら、すべり坂のように広がっている。
最初は重症の方だけ、末期がんの方だけだったのがだんだん広がっていき、認知症、精神発達遅滞、知的障害の方、あと発達障害や精神疾患の方まで広がっているということの事実。

そしてそこでは厳密にルールが守られているとは言いがたい現状もある。
人間がやることですから100%そのままできるわけではなくて、どこかルーティン化しておざなりになっている現実というのものがあって、それはすごく衝撃的でした。

起こっていることを知る中で、自分たち、日本もそうなっていく可能性、危険性を恐れたし、同時に、我々日本は認知症の人や高齢者をたくさん抱えて介護疲弊も起きている中、僕らはどういう国なんだろうということを考えました。

安楽死が合法の国と、日本のように高齢者が半ば強制的に生かされている部分もある、医療、経済の中に組み込まれていっている社会と、そこの対話というか対立というか、そういうことも考えたりしたということです。
うまく言えないですが、そういう感想を持ちました。

後半に対しては、医師と患者さんのコミュニケーションの難しさ、そこで起きる医師のモラル低下、医師の問題点が挙げられていて、それは僕も身につまされるというか、何か思いました。

充分に僕らはコミュニケーションできているのかというのは常に問われているし、現実的にはできてないんじゃないかなという風に思います。
医師と患者のコミュニケーションという問題、このすれ違いをしっかり考えるべきなんだろうなと思いました。

それを解決するための行動をするのであれば、精神科医であり、益田裕介がやはり考えることでもある。
それを考えている人たちと本当にそれを専門にしている医師-患者コミュニケーションを専門に研究している人との橋渡しになるのも僕の仕事なのかな、使命なのかな、と考えたということです。
うん、難しいね。

Q:日本の精神科医の中からも精神障害のある人に安楽死を認めるべきだと主張する声はそろそろ出始めており、精神科の看護師さんたちからも死なせてあげたいと感じる患者さんはいるという話も出ています。
例えばどういった事例でしょうか?

こういう質問をいただいたんですが、わかりません。
はっきり言うとわからないです。
僕はそういう人に会ったことがないです。

いや、ありますよ。
重度の統合失調症の人でなかなか退院できない人、重度の強迫性障害でなかなか出られなくて苦しんでいる人たちというのも、それはもちろん診たことがあるし、僕が病院で働いている間、1、2年いた間に最初からいて最後まで退院できなかった人、十何年いる人も診いますが、でもあんまり聞いたことがないし、そういう風に言う医者や看護師さんが少なくとも僕の周りにはいなかったんですよね。

安楽死をさせてあげたいと思っている精神科医の人、看護師さんとしゃべったことはそんなにないし。

そういうことを言うと、いや医者の前では本音を言わないよ、益田の前では本音を言わないだけなんじゃないか、とよく言われますけど、そうなのかもしれないし、わかりません、ここら辺は。

ただ我々の臨床はすごく難しいというか多種多様なんです。
教科書や論文になっている患者さんだけが全てではなくて、恐らく人間の全体から見たとき僕らが押さえているところはこれぐらいなのかもしれないんですね、医学が押さえている範囲は。
でも医学が押さえてない範囲の人たちも絶対いるんじゃないかなというのはやはり思います。

例えば、僕らはうつは治るって言っているけれど、30年、40年追いかけ続けた研究は本当にあるんですか?というと、なかなかないです。
トラウマの治療を何十年も追いかけた研究ってあるんですか、といったらないです。
今の診断体系が正しいんですか、というと、100年後、200年後は覆されて別の体系になっていることもあります。

現代の医療レベルでは、死以外の開放はない人はいるんじゃないかと言われたら、いる可能性はあります。
結局白いカラスはいるのかと言ってるのと一緒なので。
見たことはないですね。
でもいるのかもしれない。
そういう水準の話かなと思います。

こういうことはきちんと10年以上臨床経験があって、10年、20年臨床経験があって、一人の患者さんと10年以上治療体験があって、きちんと治した経験も失敗した経験、うまくいかなかったケースも全部知っていて、そういう人たちがきちんと論文やペーパーにしていくという作業をしないと、この議論はできないんじゃないかなと思います。
ちょっとわからないというのが僕の正直な言葉です。

Q:精神障害のある人たちが精神科以外の医療を必要とする時にも、知的障害のある人たちの場合と同じく迷惑な患者問題があるのではないかと推測していますが、その問題について先生はどのようにお考えでしょうか?
あるいは個別のそうした事例に主治医としてどのように対応してこられたのでしょうか?

コミュニケーションがうまく取れない問題はあるわけです。
幻覚妄想やせん妄という形で意識障害がある、幻覚妄想によって意識が曲がっている、歪められているということだけではなくて、発達障害のように、人格障害のように、認知自体の形、質がちょっと違うというパターンもあるわけです。

そういうときに暗黙の了解が使えなかったり、コミュニケーションがうまく取れないという問題が起きてトラブルになることは確かにたくさんあります。

そういう問題についてどのようにお考えでしょうか、と言いますけど、やはり学びが足りないんじゃないかなと思います、治療者たちの。
それは知識もそうだし、経験も含めてそういうものが足りないんだろうなと思ってます。

経験することで、この時はこういう風に答えたらいいよ、この人たちはこういう風に言葉では言ってるけど実際はそういう意味じゃなくて、本当はこういうことを言いたいんだよ、と。
それは知識が必要なんだけれど、その学びが足りてないですね。
医療者の学びが足りてないというのがあります。

ただ全ての科の先生がそれできるの?看護師さんなどが全員できるの?
医師、看護師さんの医療従事者はみんな人間なので、一人の人間でしかないから、そんなこと可能なんですか?と言われたら不可能なんじゃないかなと思うんです。


★動画の文字起こしはこちらのnoteに【全文掲載】されています。
https://note.com/wasemenblog
(文字起こし自体がない動画もあります)

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