意味ある素振りこそ重要　レッスン・オブ・ザ・イヤー辻村明志ゴルフレッスン第17回　重い道具と軽い道具を使う目的　バットをブンブン振ってませんか　エネルギーを最も効率よく伝える 六車日那乃選手と練習

素振りの重要性について六車日那乃選手が説明します。ポイントは、いろいろと負荷を変えた素振りで筋肉や体の使い方を理解することです。負荷をかけた時は全身を使って大きく、ゆっくりと振って、軽い負荷の時は力を入れずに振ってください。素振りにはいくつか目的があります。重たいものを振るときは大きい筋肉や大きく関節を使います。股関節や肩関節を動かして腹筋、背筋など大きな筋肉を意識しましょう。バットやクラブ２本持ちでゆっくりと素振りします。

素振りはとても重要で、私が教えているチームでも時間をかけて取り組んでいます。もちろん、ただ回数をこなしているわけではありません。今回は誰もができる方法で練習しながら、素振りの正しい意味を理解してほしいと思います。
　まず、負荷をかけた素振りで筋肉や体の使い方をイメージします。六車選手は「重いものを振る時は体を大きく使うように心掛けています。スイングは大きく、ゆっくりと振っています」と話しています。
　この練習では野球のバットを使ってもいいですし、２本のクラブを持ってもいいです。肩関節や股関節、腹筋や背筋を使って大きく、ゆっくりと振ります。ストレッチをするような感覚で、全身を使うことをイメージしながら、ゆっくりと振ってください。
　次に、あまり負荷がかからない素振りで鋭いスイングを意識します。この練習は、クラブを逆に持てば良いでしょう。六車選手は「軽いものを振る時は、手首や腕を柔らかく使うことをイメージしながら振っています」と話しています。速く振るには関節が柔らかくないとできません。力を入れず、ひじや手首を楽にして、振ってください。

この２つの素振りには、それぞれに意味があります。それは、筋肉を動かすことで生まれた大きな力を、速く振れる腕へ伝えるイメージを自分の中で連動させることです。普通のクラブを使った素振りでは、重い筋肉から小さな関節へ力を伝えながら速く振るように意識することが大切です。
　筋肉は、そんなに速く動かせるものではありません。関節を柔らかくして、鋭い腕の振りで生まれたスピードをヘッドの先まで伝えることが大切です。
　もう一つ、別の練習方法を紹介します。ヘッドにグローブを巻きつけて、先を重くしたクラブを使う素振りです。この練習では巻き付けるグローブの枚数を変えて、負荷を調節します。六車選手たちの練習では４枚のグローブを巻き付けた状態から１枚ずつ外していき、全てを外した状態まで１０本ずつ、計５０本を振っています。

エネルギーを最も効率よく生かすためには、下半身から体幹を通じて肩の先、腕、そしてシャフトの先端へ伝わるように力を連動させることです。体を大きく使い、腕の振りやクラブのしなりを利用して大きな飛距離を得てほしいと思います。ぜひ、試してみてください。


【辻にぃ　心の声】
　新しい一年が始まりました。国内ゴルフはオフの期間ですが、女子ツアーの開幕までは２カ月を切っています。いつまでも、のんびりしているわけにはいきません。
　オフにはキャンプや合宿で集中して練習に取り組む選手も多いです。私は、このオフの期間をどのように過ごすかがシーズンの成功に大きくつながると考えています。私のチームでは、オフは基本作業の見直しと徹底に８割くらいの時間を割きます。その上でショットやショートゲームを重点に練習します。
　前年のデータなどを見て、オフに取り組む目標や、どのスタッツを上げていくのかなどを選手と話し合うことも大切な作業です。一年を通じて、ずっと好調を持続させることができる選手はいません。調子を落とした時に、どのようにして好調時に戻すかの引き出しをつくっておくことが大切です。
　最近の選手は、あまり試合を休むことがありません。それでも、一年間を見据えると適度な休みを取ることは必要です。今は４日間大会も増え、体への負担が大きくなっています。どこの試合を休むかといった日程の調整も大切な作業になります。

辻村明志（つじむら・はるゆき）　1975年9月27日生まれ、福岡県出身。11歳でゴルフを始め、千葉・学館浦安高時代に関東ジュニア選手権高校男子の部、関東高校選手権など優勝。日大では関東学生選手権優勝、朝日杯争奪日本学生選手権2位など。2000年8月にプロ転向し、01年9月に下部ツアーのアイフルチャレンジカップ・オータムで2位となった。11年以降に本格的にコーチとなり、上田桃子、松森彩夏、吉田優利ら女子を中心に多くのトッププロを指導している。

六車日那乃（むぐるま・ひなの）2002年4月23日生まれ、埼玉県出身の20歳。身長154センチ。8歳でゴルフを始める。千葉・麗沢高2年時の19年に全国高校選手権2位。20年にナショナルチーム入り。日本ウェルネススポーツ大に進み、7月のツアーではホールインワンを達成した。目標はロレーナ・オチョア（メキシコ）

取材協力　鎌ヶ谷カントリークラブ（千葉県鎌ケ谷市中沢1348）　
　（電）047－444－4111（代表）

中日スポーツ
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