【遺言の“デジタル化”検討へ】スマホでも? 「過剰な制約」成年後見制度も議論【

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身近とは言いづらく、ハードルが高いイメージもある遺言書。作成の負担が大きいという指摘があり、法務省はこれをデジタルで作成できるよう、法制審議会に検討を求めました。判断能力が十分ではない人を支える「成年後見制度」の見直しも話し合われます。そこで今回の#みんなのギモンでは、「“遺言のデジタル化”で使いやすく?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。

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■「身近じゃない」…遺言書の経験は?

鈴江奈々アナウンサー
「皆さん、遺言書を書いたことありますか?」

辻岡義堂アナウンサー
「まださすがに…」

鈴江アナウンサー
「なかなかそこまでの発想に至らないかもしれませんが、皆さんにも関係がある話です。街でもうかがいました」

主婦(50代)
「(遺言書を書いたことは)ないです。実際の遺言書を見たことがないので、どのように書くかも分からないし、まだ年代的にも身近じゃないかなっていう感じ」

無職(70代)
「書いたことないですね」

夫婦(80代)
「(遺言書を書く予定は)ありますよ」「遺言書といってもあまり財産がないから、継ぐ人もいないから、寄付ですよ」

辻岡アナウンサー
「皆さんと一緒で、私もドラマや映画の世界の話のような気がして、あまり知識がないし、どうやって書くんだろう?という感覚ですね」

鈴江アナウンサー
「そうですよね。見たこともない、という方が多いと思いますが、法務省が15日、制度の見直しを検討するよう法制審議会に求めたことがあります。その1つが『遺言書のデジタル化』です」

■遺言書が必要になるケースは?

鈴江アナウンサー
「多くの人が大事と思っていても、実際に書くとなると困ってしまう遺言書。私たちが亡くなった後の財産は遺言書がなくても、法律に基づいて法定相続されます」

「ただ、もし『特定の誰かに自宅を相続させたい』『遺産分割で争いになるのを避けたい』などと思う場合には遺言書が必要になります」

■法務局で保管する際の細かい様式

鈴江アナウンサー
「遺言書の見本を見てみましょう。遺言を残したい人が自分で書く遺言書のことを『自筆証書遺言』と呼びます。法律の言葉では、『ゆいごん』ではなく『いごん』と読みます」

「現在の法律では、遺言の全文や日付、氏名を全て自分で手書きする必要があります。印鑑も、もちろん必要です。さらに、紛失や改ざんを防ぐためにこの遺言書を法務局で保管してもらうこともできます」

「その場合、用紙はA4サイズで、余白は左側が20ミリ以上、右側と上側は5ミリ以上、下側は10ミリ以上とミリ単位。ページの番号を記載するなど、細かい様式が決まっています」

市來玲奈アナウンサー
「かなり細かいんですね。なかなか書き慣れているものでもないと思うので、プレッシャーがかかるというか、難しそうだなと思いますね」

鈴江アナウンサー
「さらにハードルが高くなりますよね。全て手書きというのは『本人の筆跡だと判断しやすい』というメリットがある一方で、特に高齢者にとっては負担が大きいという課題が指摘されています」

■スマホはOK? 本人作成の証明は?

鈴江アナウンサー
「財産を分ける相手が多ければ、遺言を書く分量も相当なものになりますよね。そこで法務省は15日、遺言書をパソコンなどデジタルでも作成できるように変える検討を、法制審議会に求めました」

「具体的にはまさにこれから検討されますが、電子機器で遺言書を入力するとしてパソコンの他にスマートフォンを使ってもいいのか、本人が作成したことの証明で入力している様子の録音や録画をしたり、証人をつけたりすることなどが検討課題に挙がっています」

忽滑谷こころアナウンサー
「この時代はAIなどもありますし、何でも作れてしまうじゃないですか。デジタルとなると、そういったフェイクが出てくるんじゃないかと心配ですよね」

鈴江アナウンサー
「そういった懸念事項も実際に挙がっていまして、偽造防止のために発達してきた電子署名などを活用できないかという声もあります」

辻岡アナウンサー
「デジタル化は進んでいますが、デジタル化によって高齢者の方がまた大変、という可能性もあるかもしれません。私もデジタル化あまり自信がないので、優しいデジタル化であってほしいなという感覚はありますね」

■財産管理や契約などを支える制度

鈴江アナウンサー
「デジタル化とは別の話として課題に挙がっているのが、成年後見制度を使いやすくすることです。どんな制度か知っていますか?」

刈川くるみキャスター
「知らなかったです。『後見』という文字があるので、何かをサポートしたり、サポートしてもらったりする制度ですか?」

鈴江アナウンサー
「はい、まさにサポートされる制度です。認知症や障害などがある方が、さまざまな契約や手続きをする時に、ひとりで決めるのが困難となるケースもありますよね」

「そうした時に、後見人として選ばれた弁護士や司法書士などがプロの立場で財産の管理や契約などを代わりに行ったり、サポートしたりという制度です」

辻岡アナウンサー
「弁護士や司法書士だけではなく、家族も後見人になれるんでしたっけ?」

鈴江アナウンサー
「本人の意思で家族にお願いするということもできます。ただ、認知症などで本人の判断が既に難しい状況になった後だと、後見人を家庭裁判所が選ぶことになります」

「成年後見制度は高齢社会を支える仕組みとして2000年にスタートしたものですが、利用者は2022年末時点で約24万5000人。来年には認知症の高齢者は約700万人になると推計されている中で、利用している人は単純計算すると1割にも満たないことになります」

■「使い勝手が悪い」指摘も…課題は

市來アナウンサー
「そんなに少ないんですね。この制度(の内容)を見ていると便利だなという印象ですが、なぜここまで浸透していないのでしょうか?」

鈴江アナウンサー
「利用に踏み切るには使い勝手が悪いと指摘されている点があります。それは、制度を一度利用すると原則、途中でやめたり交代したりできないということです」

「例えば弁護士が後見人になった場合、遺言書など相続の手続きには活躍できますが、それが終わっても基本的にはずっと同じ後見人のまま。介護やデイサービスなどで社会福祉士にお願いしたくなっても、現在の仕組みでは利用者の意思による変更はできません」

「しかも、成年後見人に支払う報酬は平均で年間33万円。この報酬はずっと支払い続けなければなりません。そのため利用者からは『使いにくい』などの声が上がっています」

「後見制度に詳しい司法書士の西川浩之さんも『過剰な制約になっている。必要性がある場合に必要なだけサポートを受けられるようにしていくべきだ』と話しています」

■柔軟に…「期間制」「交代制」を検討

鈴江アナウンサー
「そこでより柔軟な制度にしようと、具体的な利用の必要性を踏まえてスタートし、必要がなくなれば終了する『期間制』と、本人の状況に合わせて後見人の交代を可能とする『交代制』などが検討されることになるということです」

辻岡アナウンサー
「交代ができないというのは絶対、不便になってしまっていると思います。良い話し合いが行われればと思います」

鈴江アナウンサー
「成年後見制度も遺言書も、これから誰もがお世話になる可能性がある大切な仕組みです。負担が少なく利用しやすい制度に変わることが期待されています」
(2024年2月15日放送「news every.」より)

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