困っていない(ように見える)ASD/自閉スペクトラム症/アスペルガー症候群への対応方法について解説します【精神科医・益田裕介/早稲田メンタルクリニック】

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00:00 今日のテーマ
01:06 困っていないように見えて困っているASD
02:00 困っているように見えない理由
04:30 奥さん(カサンドラ症候群)の回復
07:50 どのような対応をしていくか

ASD(自閉スペクトラム症)のご主人がいる奥さん、お子さんを持つお母さんから「どうして本人は困っていないのでしょうか?」と聞かれます。ところが本人の話を聞いてみると、困っていないように見えて実は困っているのです。

ご家族の方は、本人が直さない、気にしていない、空返事をする、指摘すると怒るから困っていないのだと言いますが、ASDの人は生まれた時からそうなので、自分なりの防衛法を身につけています。そのうちの1つが「否認」で、見えていても見ないことにして自分の精神を保っています。他に、相手の指摘と自分の困っていることが結びつかないから納得しない、どうせ直せないと開き直っていることもあります。こういったことから困っていないように見えますが、実際は困っているし、孤独感の中にいるし、直したいとも思っています。

もう1つ考えるべきことは、パートナー(妻)のメンタル状況です。精神的に追い込まれているためにキツく言ってしまい、相手の心に届かないということがあります。そういうと奥さんが悪いのかということになりますが、そうではありません。

アスペルガーの人のパートナーをカサンドラ症候群と言ったりしますが、すごく傷ついている状況にあります。パートナーも孤独感で視野が狭くなっているので、まずこの孤独感から回復することが大事です。アスペルガーの人と付き合う人は共感力が強いことが多く、それゆえ苦しんでいたりします。可能であれば、ご両親や他の家族、自助団体、福祉、医療などとチームを作ること、自分一人で抱えないことが大事です。
それから、ASDという病気への理解も大事です。どうしてあの人に伝わらないのだろう、自分の言い方が悪いのだろうかと自分を責めたりすることが多いのですが、ASDの特徴だと理解していきましょう。

また、ASDの理解はプロでも難しく、医師から奥さんが悪いと叱られたように感じて傷ついている人も結構います。ドクターはこう言っているけど、話半分に聞いておこうくらいの図々しさがあるくらいでちょうど良いです。
相手と共感してくっついてしまっている場合が多いので、一旦距離を持って冷静に相手を分析して行くことを心がけましょう。

ASDの凹凸は人によって違います。ですので、ASDの理解と言ってもその人にあった理解が大事です。生活においては具体的な解決策を増やすようにしてみましょう。「出かけるときには声を掛けてね」「10万円以上のものを買うときは相談してね」など具体的なルールを10個くらい決めれば、臨床上の問題にならなかったりすることも多いです。
否認が強いので、ああしなさいこうしなさいと言っても相手は混乱するだけです。北風と太陽のように優しく見守ります。長期戦なので疲れないようにしながらやっていくことが大事です。



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