地歌《松竹梅》 Jiuta ''Shōchikubai"

2012年8月4日紀尾井小ホールで開催致しました「第60回藤本昭子地歌ライブ」より地歌《松竹梅》(歌・三弦：藤本昭子、歌・箏：福田栄香、尺八：善養寺惠介）。
Akiko Fujimoto (voice, sangen), Eika Fukuda (voice, koto), Keisuke Zenyōji (shakuhachi) play Jiuta "Shōchikubai" at Kioi Small Hall, 4 August 2012.

　大阪系地歌の最高位と称される「三役物」のうち、《根曳の松》とこの《松竹梅》は「手事」の出の「チリチン…」が全く同じで、ここから先は「さて！どっちの曲だっけ！」と恐怖なのです。油断をするとごっちゃごちゃになります。この大曲2曲を一度の演奏会で弾くことはそうそうはないと思いますが、もしもそのような機会がある時は皆様どうかお気をつけ下さい。
　いつも記念公演にご助演賜ります福田栄香さんは、九州系の芸祖長谷幸輝検校の高弟で「三羽烏」のおひとりでいらした初代福田栄香先生のお孫さんで、お父様は福田種彦先生です。私は種彦先生の忘れられない思い出がございます。先生がお箏、母が三弦の《残月》を舞台の袖で拝聴させて頂きました際、先生のお箏に感激して涙が止まらなくなりました。私がまだ20代の頃です。以来、私は種彦先生の大ファンでした。先生のご葬儀の時に栄香さんが、「一緒にお棺に入りたい」と仰いました。そのお気持ちは、母を亡くした時に痛いほど分かりました。九州系の古典の「間」を共有できる大切な演奏家仲間として、同年代の善養寺さんと三人で、大曲にチャレンジさせて頂ける喜びに心から感謝申し上げております。