内面を語る困難さ 

Описание к видео 内面を語る困難さ 

00:00 OP
02:43 自己開示とは違う
04:30 一方通行の会話
05:57 イキイキした内面を語れない理由
08:52 イキイキとした内面を語れるようになるには

本日は「内面を語る困難さ」というテーマでお話しします。

ドラマ、映画、漫画などでは、心の苦悩をつらつらと語る人たちがたくさんいます。
そういう人たちの助けになりたいと思い精神科医を選んだり、心理士という仕事を選ぶと、そんな人はどこにもいないということに驚愕します。
ドラマや映画の登場人物のように上手く語れません。
イキイキと内面を語る、ということはあまりありません。

もし、つらつらと語る、イキイキと語るものがあったとしたら、治療者はそれを疑わなければいけません。それは患者さんの演技、作られたものであったり、自己憐憫に浸っているものであったりします。
そのストーリーに乗っかってしまうと、治療者と患者さんの共謀関係になってしまうことがあります。

「私はこんなに苦労したんです、母が悪くて…」などと言い、母親を一緒に悪者にして語る会話になってしまうと、母親1人を悪者にした共謀関係になってしまいます。
「旦那が悪い」ということになってしまえば、それも旦那さんだけが悪いという共謀関係になってしまいます。

そうすると治療がうまくいきません。
患者さんと治療者が結託して誰かを悪者にするというのは、良い治療にはなっていかないのです。

やはり基本的にはイキイキとした内面を語る、ということはありません。
もし語る患者さんがいたとしたら、他に考えられるのは数回で終わってしまう患者さんです。
だいたいの患者さんは語れません。
語れないからこそ臨床が必要だったりしますし、皆さん苦しんでいる、ということです。

■自己開示とは違う

イキイキした内面を語るというのは、自己開示とは意味が違います。
「自分はこういう人間なんです」ということを語ることとも違いますし、「苦しい」と相談することとも違います。

そういうことと違って、自分の感じていることや考えていること、その時その場面で自分がどう感じたかということを話すことです。
ですが、臨床ではあまりそういうことはなく、か細い内面を語ります。

イキイキとした内面を語るということがないと、人間関係は上手くいきません。
コミュニケーションというのは、問題解決をするために淡々と仕事の話をすればコミュニケーション能力が高い、失敗がなくそつなくやればコミュニケーション能力が高い、ということではありません。

自分の感じたイキイキとした内面を語っていくことで、相手は信頼したり、自分のことを信頼してくれているんだなと思ったり、人間同士の心の触れ合いがあって楽しかったりします。

これが苦手だとやはり上手くいきません。
人間関係を育めませんし、仕事の関係だけになってしまいすぐ人との縁が切れてしまったりします。
相手も愛情を感じにくいということもあります。

■一方通行の会話

患者さんは、症状の羅列、朝起きたらこういう頭痛があって、その後昼にお腹が痛くなって、といった話をすることが多いです。
後は、どうにもならない現実や困難を訴えたりします。
「結局、自分は障害があるから」「お金を稼げないから」「資格がないから」など何でも良いのですが、出口がないような訴えが続くことが多いです。

そのような話を聞くこと、訴えを聞くことがカウンセリングになるというわけではありません。
ただただ一方通行の会話になってしまいますので、そういうものではありません。

カウンセリングや精神療法は何かというと、一人と一人の人間が向き合い、語られたものを聞いて的確なアドバイスや言葉を相手に返すことです。
苦しいことを一方的に聞いてくれるのがカウンセリングだと思っていると、ちょっと違います。

■イキイキした内面を語れない理由

イキイキした内面を語れない理由は何かを考えていくと、いろいろあります。

・自閉、ASD、うつ病
うつ病などの病気が原因でエネルギーが低下していて、自分の内面を語れないことがあります。
発達障害や境界知能、自閉性の問題があることもあります。そもそも内面を語るための言葉を扱う力が弱い。

・抑圧(不安)
不安、恥ずかしい、馬鹿にされたくない、といった思いで抑圧しています。

・PTSD、複雑性PTSD
外傷体験があることによってそこの記憶が隔絶されている、 。

・母との関係、BPD(境界性パーソナリティ障害)
母親から、そんなことを喋ったらみっともないという教育を受けている。
内面は語るものではない。
母親の愚痴を一方的に聞き続け、自分がちょっとでも学校の愚痴を言うと「でもね、お母さんはね」と話を取られてしまう。そして変に調教されてしまい、経験値不足になっている。

境界性パーソナリティ障害のような形で、内面を語るスキルの足りなさ、うつっぽさ、自閉性、抑圧の問題などの合わせ技があることもあります。

・経験不足

・信用していない
主治医をそもそも信用していないこともあります。
口では信用していると言っても、向き合っていない、「治療していこう」という気がない。
「薬を出してもらえれば治っていく」「話を聞いてくれれば良い」と、そもそも聞く耳をもっていません。
ただ、これを責めてもいけません。

そもそも人を信用したことがない人たちもいますし、信用できなくなった人たちもいます。
わざわざ医者だけを信用する・しない、心理士だけを信用する・しない、ということはしないわけです。
信用しない人のところにわざわざ手間をかけて来ません。
ですから、信用していないのは僕らだけではありません。
つまり、いつものパターンを繰り返しているのです。

このように、いろいろな原因を考えます。

■イキイキとした内面を語れるようになるには

どうしたらイキイキとした内面を語れるようになるのでしょうか。
これはなかなか難しいです。

「そうか、信用してもらってないんだ。じゃあしっかり向き合えば良いんだ」と、金八先生のように強く向き合えば良いんだと思うかもしれません。

強く向き合うのはあまりよくありません。
それは共依存的な関係になることがあれば、治療構造を破壊してしまうこともあります。陽性転移や逆転移の問題もあります。
そうでなくても、そもそも強く向き合うというのは患者さんにとってとても負担になります。

内面を「語れ!」というのは結構苦しく、壊れてしまう可能性があります。
外傷体験を思い出すことにもなりますし、不安をひっぺがされたり、劣等感や弱さを突きつけられ辱められるような感じも出てしまいます。
母親や父親との関係の再来があったりもします。

タイミングも見計らわなければなりません。
信用していない時に強く向き合うと、患者さんの信用していないものを促進させてしまうかもしれません。
患者さんは、きちんと見ていません。「益田裕介」がどんな人間かわかっていない時です。

僕はこれだけ自己開示をしてYouTubeをやっているのですが、でも僕のことはよくわかっていません。
こういう人間で、こういう価値観で、ということがわかっていないのです。
だから憎んだり怒ったりします。「投影同一視」と言いますが、自分の心の中のものを相手に投射してまっすぐ見えていなかったりします。
そういう時にしっかり向き合おうとすると、妄想というか投影同一視を促進させてしまうことがあります。

あとは、発達障害の問題です。
グレーゾーンまで含めると、今はどのような人も考えなければいけない問題です。
そもそも内側に内面を語るための材料がない時に強く向き合っても、ただ嫌がらせを受けているような感じになります。自分で頑張ろうとしているのに、さらに宿題を渡されているような感じになります。
数学ができないなと思ったら、善意かもしれないけれど、数学のプリントをドンと渡される。それで余計苦しくなってしまうようなものです。

ここはバランスです。 
全く向き合わないのは良くありませんが、かといって強く向き合き合えば良いというのも違います。

ここもダメな母親、良い母親、のようなもので、母・娘や母・息子の関係と同じです。
子育てに悩む母親と同じで、「どうしたら良いんだろう?」という感じです。
これは本当にバランスです。

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   早稲田メンタルクリニック院長 益田裕介

【自己紹介】
益田裕介
防衛医大卒。陸上自衛隊、防衛医大病院、薫風会山田病院などを経て、2018年都内で開業。専門は仕事のうつ、大人の発達障害。といいつつ、「なんでも診る」ちょっと変人よりの町医者です。
趣味は少年ジャンプとお笑い。キャンプやスキーに行きたいです。
2020年6月5日より断酒継続中。

【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/
カプラン 臨床精神医学テキスト第3 https://www.medsi.co.jp/products/deta...
倫理規定について https://note.com/mentalyoutubers/n/nb...

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